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人間は愚かという前提に立った経済学“予想通りに不合理”レビュー

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人間は不完全であることを前提にした経済学

予想通りに不合理

「人間は常に合理的で論理的に正しい振る舞いをする」というのが従来の経済学の土台です。

でも現実は経済学の予測モデルの通りには動きません。

なぜかというと「正しい振る舞い」を必ずしも人間は取らないからです。

その前提に立った上での経済学「行動経済学」について面白おかしく語られた書籍です。

 

「あと500円で送料無料!」の一言でつい余計なものを買ってしまったり、飲み会で皿に残った最後の1つの唐揚げに誰も手を伸ばさなかったりと、経験したことはないでしょうか?

そういった行為は行動経済学で説明が可能なのです。

護身術としての行動経済学

送料無料にしても最後の唐揚げにしても、ある程度説明が可能ならば利用しないてはないでしょう。

実は行動経済学は身近に存在するもので、わたし達の行動に大きく関係しています。

 

「こういう時はこうする」というパターンが行動経済学で説明ができるので普段の選択に影響を与えることができるのです。

買い物をする時に自分で選択したと思った物が実は売り手が一番売りたい物だったりするわけです。

こういった選択の「恣意的な点」に気づくことができるのは、この本の大きな利点ではないでしょうか。

関連する書籍

この予想通りに不合理をコミカライズしたらこうなるだろうって本。

マンガなのでとても読みやすいので「行動経済学ってどんなこと?」と興味がある人なら最初に読んでみるといいでしょう。

かなり説明は省かれているところはありますが、お手軽です。

www.nenzop.net

 

行動経済学とは直接結びつかないかもしれないのですが「ネガティブなことに人間は注目する」であるとか「現状の傾向がずっと続く」などの10の思い込みについて説明されています。

これらの思い込みによって人がどのように判断を誤るのかという点は行動経済学に関連する部分かと思います。

www.nenzop.net

この本を読んでみて

作中でシェイクスピアの喜劇の一節が引用されています。

人間とはなんとすばらしい傑作か!その崇高な理性!限りのない能力!形と動きのなんと的確でみごとなことか!その行動は天使のごとく、理解力は神のごとく!この世の美しさそのもの、まさに生き物の鑑。

ダン アリエリー. 予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.193-195). Kindle 版.

まさに、これがこれまでの経済学の前提です。

人間の知能は素晴らしく、常に合理的な判断を下すという前提で議論がなされてきました。

 

でも人間って常に合理的な判断を下すというのはちょっと人間的ではないようにも思います。

人間の不完全さ、不合理さを認めて、著者はこう語ります。

ふつうの経済学は、わたしたちが合理的であると考える。つまり、決断に役立つ情報をすべて知っていて、目の前のさまざまな選択肢の価値を計算することができ、それぞれの選択による結果を何にも邪魔されずに評価できると想定している。

ダン アリエリー. 予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.5785-5787). Kindle 版.

人間は常に合理的な判断を下すという理想から、現実に根を下ろした新しい経済学である「行動経済学」。

経済学に興味はなくとも、ユーモアのある書き方なので読み物としても大変楽しめました。