知らないうちに密猟品を口にしているかも…
サカナとヤクザ
スーパーにパックで並んでいる魚介類が実は密猟品かも?なんて想像すらしたことはないのではないでしょうか?
実は食品によっては密猟品が紛れ込んでいることがあるかもしれないのです。
お盆や正月には魚介類の消費は増えるのに、正規の流通量を時期によって変化させるわけにはいかないし、そもそも当のサカナだって売れる時期に限って多く取れるってわけでもない。
季節性の消費者ニーズの調整弁として少なからず密猟品が入り込む余地があるというのです。
そうなってくると消費者であるわたし達だって、もしかしたら密猟の共犯者という可能性すらあります。
タイトルにあるように密猟者というのはヤクザ者のこと。
密猟は薬物の密売と同じくらい利益が上がるのに対し、刑が軽いということで最近人気のシノギだといいます。
密猟品は様々なルートに紛れて正規品として流通しています。密猟品を購入してしまい、知らず知らずのうちにヤクザの資金になっているかもしれませんね。
「このサカナはどこから来たんだろう?」そんな疑問が生まれ「うまい魚を食べると密猟者(ヤクザ)が儲かるのか?」という議論を呼びそうな一冊となっていました。
築地、銚子、根室…日本有数の魚市場の裏の顔
この本は実際にこれらの魚市場へ足を運び、インタビューはもちろん、実際に就職してみることで「密猟品はどこから来るのか?そしてどこへ行くのか?」という疑問に迫ります。
自身のヤクザライターとしてのコネクションを活かし、現地ヤクザの密猟チームの密猟現場すら押さえます。
密猟がどのように行われ、海上保安庁や警察を避ける巧妙な手口が語られます。
ヤクザと海上保安庁、そして警察という3つの組織がどう争い、癒着しているか多角的な視点からのインタビューから垣間見ることが出来ます。
北は北海道の根室での北方領土、ロシア領海内での命がけの密猟から南は上海のうなぎ(しらす)の密猟まで日本人の食卓に並ぶ魚介類の出自を追いかけます。
関連する作品
この本を1冊書き上げるのに5年という歳月がかかったといいます。
それでも著者の鈴木氏は「まだ足りん!」と思っていたようですが編集部にブチ切れられえいやっ!と脱稿した後に出会った映画。
その映画で音楽に感動して実際にピアノを始めます。
この本を読んでみて
漁師というのはサカナを獲るのが本能です。同時に日本は法治国家。
漁にも法律というルールがあり、法律があるから違法な漁、密猟が発生します。
漁業にルールを持ち込んだ途端、密漁は必然的に発生する。目の前に魚がいれば全部獲るのが漁師の本能だ。非漁業者にとっても、誰かのものを盗んでいる自覚はない。 「山で山菜を採っても犯罪にはならない。なのになぜ海産物を獲ったら犯罪になるのか」 それが密漁者たちの偽らざる本音なのだ。
サカナとヤクザ(kindle版)位置: 3,228
海に囲まれた日本の食生活を支え続けてきたサカナ。
サカナという日本人に欠かせない食材を見つめ直す1冊となりました。
5年という歳月をかけて作り上げた渾身のルポルタージュ。ご一読あれ。
記事サムネイルはAmazon商品ページより引用。