言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

三かく人間がはびこる社会でどう生きるか。”メンタルの強化書”レビュー

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情に流されて生きづらい優しい人向けの本

メンタルの強化書

理不尽な上司や同僚に消耗してしてしまってメンタルをやんでしまう人に向けた本です。

鈴木宗男事件で2年近くも拘置所に勾留され続けた佐藤優氏による言葉には重みがあります。本書の中で佐藤氏は交流中に一度も精神的に止むことがなかったといいます。

自由が著しく制限された拘置所でどのように精神的な安定を保てたのでしょうか。

 

キリスト教という宗教に頼ることができたことを踏まえても、自身のメンタルの健康を維持できたというコツは何なのでしょうか?

国家公務員というエリート同士が出世を争う世界と拘置所という厳しい状況をくぐり抜けた佐藤氏による精神を健全に保つ方法のヒントが溢れた一冊です。

硬いメンタルはいつか折れる

佐藤氏が考える強いメンタルは折れない、屈強な鋼のようなメンタルを意味しません。佐藤氏が考える真に強いメンタルとは柔らかく、しなやかなメンタルであるといます。

硬く強いメンタルがポキッといってしまって再起不能になってしまいますが、柔らかいメンタルは状況に応じて対応することができます。

 

少子高齢化と働き方の変革が進む現代社会で求められるのは、どんな状況にも耐えられる屈強なメンタルではなく、状況に応じて対応できるしなやかなメンタルです。

ライフステージがパターン化されていた昭和の時代では固く屈しないメンタルこそが強いメンタルだったのかもしれませんが、これからの時代は柔らかく状況に応じて心持ちを変えられるメンタルこそが強いメンタルなのだと語ります。

教養とは立ち止まれること

本書ではマスメディアの功罪についても語られます。テレビは影響力を失いつつもありますが、21世紀になっても強力な影響力を持つメディアです。

良くも悪くもマスメディアは耳目を集める話題を求めがちです。物事の真相が明らかになっていない段階で過剰に報道・反応するマスメディアは短絡的な思考を生みます。

 

明らかに比率の間違った円グラフや街頭調査に何度も現れる自称通行人に代表されるようにマスメディアには「こう見られたい!」という願望が透けて見えます。

 

マスメディアの対応策として教養があります。本書で教養とは立ち止まれる力だと定義されてます。

円グラフを見て「こりゃ比率が変だぞ」とか「さっきからの街頭調査の意見って偏っていないか?」と立ち止まって考えることができる力こそが教養だといいます。

関連する本

これからの日本がどのように変化していくかを語った本です。日本の暗い未来が描かれます。レビューはこちらからどうぞ。

佐藤氏が勾留中のことを描いた本。メンタルの強化書にも交流中のことが軽く触れられています。 

この本を読んでみて

メンタルの一番の強化法は下品になることだと佐藤氏は語ります。

夏目漱石は名作『吾輩は猫である』で「三かく人間」のことを書いています。「三かく」とは、「義理を欠く」「情を欠く」「恥をかく」の「三つのかく」のこと。

(中略)

「三かく」とは、すなわち「下品」であることと同じです。お金儲けをするには「三かく人間」=「下品」でなければできないと、漱石は鈴木藤十郎の口を使って言っているのです。

佐藤優. メンタルの強化書 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.363-365). Kindle 版.

こんなふうに図太く、図々しい人にはなりきれない人に向けられたこの本は佐藤氏の優しさと現実社会の厳しさについて語られます。

優しく、奥ゆかしい人間味あふれた人が心を病まずにこの厳しい自己責任原則の社会を生き抜いていくかのヒントを見るけることができるでしょう。

記事サムネイルはamazon商品ページより引用しました。