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確定した暗い未来と怪しい処方箋「未来の年表」感想

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日本の暗い未来と効き目の怪しい処方箋。

未来の年表

少子高齢化がさけばれて久しいですが、未来の日本はどうなってしまうのでしょう。何百年という遠い未来ではなく、20年から40年くらい先。この文書を読んでいる人なら、きっとまだ生きているのではないでしょうか?

この本には「国の人口が減っていく」という、近代国家ではじめての事態に陥っている日本がどのような困難に見舞われるか。そして、その対処法について書かれています。
残念ながら日本の人口減という未来は考えている以上に深刻です。この本の印象的な文書に

国家が滅びるには、銃弾一発すら不要なのである。

河合雅司. 未来の年表 合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.136). Kindle 版.

というものがあります。現状の出生率を考えると紙を半分に切っていくのを繰り替えるかのように指数関数的に人口減が進んでいくのです。

人口減の日本で起こり得る悲劇的なシナリオの数々に目を覆いたくなるほど。働き手もどんどん減っていて、インフラの維持も国防も危うくなる未来が描かれています。

でも、この本には10の処方箋が紹介されています。この処方箋で日本の消滅から救えるのかというと、それはまた効き目の怪しいのですが…

加速する人口減

子供が生まれるには父親と母親という両親が必要です。両親から一人しか子供が生まれないと親世代と子世代の人口比は2:1となります。つまり半分ですね。

これを何世代も繰り返していけばどうなるでしょうか?人口が半分の半分の半分…と繰り返していけばあっという間に総人口は小さくなっていきます。

今の日本はその1回目の半分を経験したときなのかもしれません。前年度との人口減少幅はわずかですが、この減少幅がどんどんどんどん大きくなっていくのです。

戦後の高度成長期は大勢で一人の高齢者を支える構図でしたが、2040年代以降は一人で一人の高齢者を支える肩車の構図に移り変わっていくとの見方もあります。そんな劇的な変化を迎える日本ですが、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?

消える地方、老いる大都市

2019年現在、東京などの大都市に人口が集中していると言われています。この流れはしばらくは止むことはないでしょう。

問題は、大都市でも少子高齢化は進んでいるということです。今でこそ大都市には働き手が溢れていますが、人間は誰しもが老いるので、いずれは高齢者となっていきます。今の働き手が老いた少子高齢化した大都市はどのようになるでしょうか。

支える人は少ないのに、支えて貰う人はたくさん。大都市に移住してきたの地元はとっくに限界集落になっていてUターンもできない…なんて状況に陥ってしまう未来が予想されています。

日本消滅の処方箋とは…

人口減というのは詰みに近い状況であることがこの本の前半にみっちりと書かれています。暗い気分になります。

ですが、後半は少しは希望を持たせるような政策についての10の提案がなされています。本の中では処方箋として紹介されています。中には「効きそうだな」と思えるものもあり、「これは無理でしょ…」ってのもあります。

劇薬並に効きそうなのが「人口増となる3人目の子供を生んだ家庭には1000万円支給」というもの。10万ドルぽんとくれるわけですから、積極的に複数子供を生んでくれるかもしれません。

他にには「高齢者の定義を引き上げる」というもの。高齢者の定義を設けた当時より、今の高齢者は10歳くらい元気だという研究結果から高齢者の線引を引き上げれば高齢化社会は緩和されるといいます。そりゃそうかもしれませんが「70歳まで働けよ。年金出さねぇぞ」と言われているようですよね。

効き目が怪しいのがこの処方箋「死んだら医療費回収」。例えば死亡したAさんが5000万円の遺産を残したとします。

この場合、

Aさんが生涯に利用した社会保障サービスのうち公費負担分が1000万円であれば、死亡時にその1000万円分を国に返納する。遺族は、残る4000万円を現行制度どおりに相続対象とするのである。

河合雅司. 未来の年表 合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2402-2405). Kindle 版.

となります。これにはわたしも苦笑い。そもそも5000万円も遺産を残せる人なんて稀でしょうし、現金で残っているわけでもありません。就職氷河期などで一生の稼ぎが社会保障サービス利用料以下って人のほうがザラなのでは?

誰も損をすることにはならない

河合雅司. 未来の年表 合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2408-2409). Kindle 版.

と書かれていますが、遺した持ち家を「これは社会保障サービス代だから」と国に持っていかれたら、遺族はどんな気持ちになるでしょうね。

この本を読んでみて

前半はとにかく暗くなる気持ちの本です。未来のない日本を見せられて明るい気持ちにはなれません。

あまりに前半が暗すぎるので、後半の処方箋もパンチ不足。ですが、計画的に縮むというのには納得。「目に見えた人口減があり、どうやっても即効性のある対策がてないのなら、それを見越して動きましょうよ」っていう考え方は十分に納得できるものではないでしょうか。

いずれ、わたしも高齢者になるのですから今のうちから備えられるものは備えていきたいですね。個人でも、国家でも。

暗い気持ちになりたいのなら前半戦だけどうぞ。おかわりもあります。