勧善懲悪なありがち時代劇?いやいや…
衛府の七忍
時代は徳川家康が江戸幕府を開いた1600年代初頭。これにより大和民族は日本を統一した民族となります。
この物語は統一に従わなかった「まつろわぬ民」の差別と復讐の物語。
日本を統一したマジョリティを覇府、それに従わず差別を受けたり社会的弱者を衛府と呼び、衛府の人々が復讐のために冥界から蘇ったのが怨身忍者。
怨身忍者の超絶アクションで非道な悪玉をバッタバッタと倒していく爽快さはありません。
どこか人間の暗い部分を強調した物語で仄暗い怨身忍者たちのエピソードがオムニバス形式で語られていきます。
とんでも時代劇として読むことも出来ますが、一方的に虐げられる、まつろわぬ民の悲哀を思うとどうしても爽快感はありません。
覇府と衛府との間で生きる人達
支配・被支配の世界で生きる階級社会のある架空の江戸時代。
ピラミッドの頂上に君臨するのはもちろん徳川家康。
この階級社会に生きる人々を覇府側の人間。
階級社会に否を突きつけ、異端の者とされるのが衛府の人間たちです。
架空のカースト制度での下位カーストの人々は例えば異教徒や移民の人たちです。
彼らが苛烈な差別や虐げを受け絶命したときに龍が現れ「このまま安らかに死の眠りつくか、怨身忍者となり修羅の道を歩むか」と聞かれ、後者を選んだ者たちが衛府の七忍の一人となるわけです。
ただし、怨身忍者となって蘇っても守ろうとした仲間や組織は覇府側の人間に蹂躙されており復讐を遂げてメデタシメデタシということにはならないところにやるせなさを感じさせます。
関連する作品
オムニバス形式で物語が進んでいくのですが、登場人物はこの本の著者、山口貴由作品の過去の作品から引用されています。
このシグルイの他にも覚悟のススメなどの作品からも登場人物が現れています。
微妙に名前は変わっていますが過去のキャラクターに再会することが出来ますよ。
こちらも弱者が支配者層に立ち向かう作品です。
SF要素が強いですが、こちらのほうがエンタメとして楽しむことが出来ました。
この本を読んでみて
時代劇って勧善懲悪の紋切り型のイメージが強かったのですが、衛府の七忍はSF時代劇といったような新しさがあります。
また、悪を斬って一件落着ということもなく、まつろわぬ民の苦悩はまだまだ続きそうな雰囲気を醸しています。
最新刊ではようやく7人目の忍者が揃い、新しいステージへ物語が進みそうです。
グロ描写が結構あるので人によっては苦手かもしれませんが、新しい形の忍者が描かれていますので是非どうぞ。
記事サムネイルはAmazon商品ページより引用。