わっしょい!わっしょい!(MUSE音頭)
Drones (2018)
お前なんかレバーひとつで殺人鬼に仕立て上げてやる。
そんなメッセージが伝わるような不穏なジャケットから繰り出されるMUSE音頭。Stockholm Syndromeのアウトロが楽曲になったPychoがリードシングル。イントロで「わっしょい!わっしょい!」と盛り上がれます。
”気に入ったか?!”
”Aye Sir!!!!”
ってなること間違いなしです。こんなにしっくり来るのは盆踊りに通じる「わっしょい!わっしょい!」みたいなリズムがあるからでしょうか。とにかく「わっしょい!わっしょい!」がぴったりな楽曲がてんこ盛り。
実はこのアルバムはコンセプト・アルバムとなっています。軍曹の演説がトラックに含まれているあたり、メッセージ性を強化していますよね。思うに「お前みたいな普通の人間も簡単に殺人鬼(ドローン)に仕立て上げられるんだぞ」っていう危うさも含んだアルバムになっていると感じます。
収録曲とおすすめ曲
このアルバムを語る上で”Pycho”は欠かせないでしょう。むしろこの楽曲があるからこのアルバムが成り立っているような感じです。
Stockholm Syndromeのアウトロで音頭を奏でていたリフがそのまま使われているので「わっしょい!わっしょい!」感が全開です。終盤の転調もいい感じです。
- Dead Inside
- Drill Sergent
- Psycho
- Mercy
- Reapers
- The Handler
- (JFK)
- Defector
- Revolt
- Aftermath
- The Globalist
- Drones
”Pycho”では殺人鬼に仕立て上げられる青年が暗喩されていますが、その直後の”Mercy”では殺人鬼になりそうな慈悲を乞う人間的な葛藤が描かれています。”Pyscho”の直後に持ってくるあたり、人間性を保とうとする苦しみが如実に表されています。でもこの慈悲を求める歌、だれに求めるかって言明されていないんです。「とにかく誰か助けてくれ」っていう殺人鬼になった人間(Drone)の魂の叫びだと解釈できるんです。この楽曲の直後にある”Reaper”(死)というのもドラマチックですよね。
”Defector”これは退役軍人と解釈することができます。歌詞の中に「お前に俺を制御させない」という歌詞があります。もうこんなのは終わりだ。俺は人間として、殺人鬼としてではなく、生きるんだという強い意志を感じることができます。メロディもどこか雨上がりの晴れやかな空模様を想像させます。
でも直後の楽曲は"Revolt"(拒絶)というタイトル。何に対する拒絶なのでしょうか…さらに続く”Aftermath”(後遺症)という楽曲は実に明るい曲調で希望を思わせます。Droneとして戦った人間の平穏な暮らしへの回帰が描かれます。
DronsをAmazon Musicで!
MUSEのアルバムはAmazon Musicで配信されています。今回紹介しなかったStockholm SyndromeもAmazon Musicで聴くことができます。
Dronesは本当によくできたコンセプト・アルバムです。完成度で言えばMy Chemical Romanceと比肩するでしょう。このアルバムのコンセプトは戦争と兵士。兵士が如何にして人間性を失い、人間性を取り戻したかを如実に表現されています。
鉄拳のパラパラマンガもいい味出していますし、ぜひアルバムを通しで聞いてほしい完成度になっています。