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コミックレビュー「約束のネバーランド」ダークファンタジーSF

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没頭してしまう世界観

約束のネバーランド

週刊少年ジャンプの新時代の幕開け。かわいい絵面から繰り出される、一見ジャンプらしからぬダークファンタジーなのですが、「努力・友情・勝利」のジャンプ三原則をしっかり反映した作品。

 

ストーリーの大枠としては、食用として牧場で飼育されている人間の子供たちが異形の食人鬼に反旗を翻す物語。食用の子供を育てるのは大人の人間。食人鬼は人間以上の身体能力と同等の知性を持っています。管理する側の大人の人間は食人鬼と交渉できるほどの力を持ち、子供を大人の人間の身分の違いも、ダークファンタジー感を引き立てます。

 

SF感があるのが物語が近未来の2040年代の地球だってこと。そして食人鬼と人間は1000年以上前から「約束」を結んでおり、食用人間を提供する代わりになにかの見返りを結んでいるのかのような雰囲気を醸します。

 

もしかしたら、私達が生きている世界も実は食人鬼と「約束された」世界なのかも…1000年以上前に何らかの契約があって、たまたま私達が生きている世界が管理する側の人間の世界だったら…って思うと作品に恐ろしいほど引き込まれます。

 

「いただきます。」の意味

この漫画の面白いところが近未来なのに、牧場の生活の水準は中世の暮らしそのものなところ。でも食用子供が学習に使うデバイスはかなり近代的。こういったギャップが不自然感を醸し、不穏な空気を感じます。

 

食人鬼が出てくるってことなので当然人は食べられます。死人が出ます。人間が食べ物を食べないと死んでしまうのと同じように食人鬼も人間を食べないと死んでしまう。普段、私達人間が食べている食材の動物や野菜だって同じなんじゃないか…って食人鬼の立場にも理解ができるってところがストーリーに重さを与えています。

 

基本的にダークでヘビーなストーリーなのですが、単行本ではおまけマンガに癒やされます。死人が出ていない世界線でのハッピーな世界で暮らす登場人物たちが一服の清涼剤としてクッションになります。

 

うーん…なところ

他の漫画にも言えることなんですけど、スタートダッシュが面白すぎて、第2部以降に勢いを感じにくいってところですね。ただし、第3部の食人鬼との対決は夢中で読み進めてしまうのでご安心を。

 

この作品の世界観からしておそらく長編作品になると思うのですが、中垂れしないかがすでに心配です。人間の世界と異形の鬼の世界をわかりやすく、初見の読者にもフレンドリーなストーリーで描き続けることできないんじゃないか…って10巻の時点で思ってしまいます。

 

あとこの作品の世界観ってどう考えても某KD社のあの作品の香りを感じますよね。あの作品自体、一度ジャンプに持ち込んでリジェクトを食らって某KD社で大ヒットした過去がある以上、マーケティング的な匂いも感じてしまいます。

 

この本を読んでみて

何故かこの本を読んで思い出したのがシュガーダークというライトノベル。この作品にピンとくる人は約束のネバーランドにハマっちゃうのは可能性は非常に高いです。シュガーダークでも異形の鬼が人間を殺しに来ます。シュガーダークと約束のネバーランドで違うのが鬼が人間を「ただ殺す」のか「食べるために殺す」のかっていうところ。

 

食人鬼が私達人間と同じように笑い、泣くという人間味を感じるあたり鬼の立場も理解できるっていうところも、この物語に味わいを与えています。豚や牛、鶏からしたら私達人間は食人鬼と同じですものね。

 

アニメ化も決定されているこの作品。読んで損することはないのでぜひ1巻だけでも読んでみるのはいかがでしょうか?きっと止まらなくなると思いますよ。