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文明崩壊後の世界を少女が巡る「少女終末旅行」感想。サヨナラの旅の結末

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地球に残された人類の痕跡にサヨナラを言う旅。

少女終末旅行

少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

 

文明が崩壊して荒廃した1000年以上未来の世界を愛車のケッテンクラートで旅する2人の少女たちの物語。文明崩壊の影響か、誰もいなくなった地球を一年中降りしきる雪の中を人類の痕跡が残る(もしかしたら人がいるかも)と言われる”最上層”への旅を続けます。

食べ物を探して眠る、そして移動する。という単調で目的らしい目的もない旅なのですが、旅する少女たちは生き生きとしていて、なおかつ、どこか悲壮感を漂わせる少し不思議な雰囲気をまとっています。

旅の大目的としては最上層へ向かうことですが、途中で読者は気づくでしょう。これは人類がいなくなった地球に残る人類の痕跡を一つひとつ見つけてサヨナラを言っていく旅なのでは?と。

 

人類の痕跡と残されたものとのお別れ

この物語には動物はおろか、木や草、山や川なんかの自然の物も全く出てきません。少女たちが旅するのはかつて人間が作った景色。自然も野生動物もいなくなった、人工物だけの過去の景色の中を少女たちは旅していきます。

特筆すべきは、その景色の描写。定規などを使用しない手書きを強く感じさせる少し歪んだ、細い線で人類が過去に作った建物や街の中を旅していきます。

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Image:amazon立ち読みページより

旅する中で人類が残したものやどこへ行ったのかを示唆するシーンもあり、世界大戦の始まりから終わりまでを詳しく描写することはないものの、何が起こったのかは読者が想像できる余白が残されています。その余白には、地球に残されたモノの使命や苦悩も想像でき、読者は切なさや悲しさ、一途さを覚えるでしょう。

それは人類が残していっモノや痕跡を一つひとつ見つけて「ここにはこんな人達がいたんだね」とか「こんなものを作った人たちがいたんだね」と区切りをつけて、サヨナラを言って去るからなのかと思いました。

 

死に至る旅行

少女終末旅行は全6巻ですでに完結していますが、旅の終わりの詳細は明確には示されていません。正確に言えば彼女たちがどうなったかは曖昧になって終わっています。

作品の中では終盤に近づくに連れて「人類最後の絵」と称したイラストを描いたり、「生きるのは最高だったよね」とまるでこれから死ぬかのような発言、愛車・愛銃との別れなど終末に向かって突き進んでいきます。

最上層にたどり着いた彼女たちがその後どうなったのか、読者が想像できる余白を残すために「こうなりました」っていう明確な終幕は描かれていませんが、素直に考えればやっぱり2人とも死亡してしまったのかなと思います。

少女終末旅行 6 (BUNCH COMICS)

少女終末旅行 6 (BUNCH COMICS)

 

 

このマンガを読んでみて

人類の痕跡をたどり、サヨナラを言っていく終末旅行。最終的に一緒に旅をしていた愛車と愛銃ともお別れをする展開になっていきます。愛車との別れには思わず泣いてしまうほど感情が揺さぶられました。

細かい時代背景は描かれていません。どうして地球はこんな風になったのか。なぜ文明は崩壊したのか。他の人類はどこに行ったのか、主人公の少女たちはどこから来たのか。そしてどうなってしまったのか。明確には描かれていませんが、彼女たちの旅は生き生きと描かれ、そして終わりを迎えます。

ストーリーらしいストーリーはあまり強くはありませんが、つくみず先生が描く世界観は絵なのに音や暖かさ・冷たさが伝わるようです。アニメのエンディングではつくみず先生が制作したアニメが使用されています。アニメ版は最終巻までのストーリーは描かれておらず、4巻目までで終わっているとのこと。しかしエンディングアニメーションでは最終巻と同じシーンが描かれていて、きっとつくみず先生の中ではこの物語の終わらせ方をこの時点できめていたんだなって考えることができます。

6巻完結という読みやすい長さですし、しんしんと降り積もる雪の中を旅する孤独で幸福だった2人で1人だった少女の旅に付いていくのはいかがでしょうか? 

少女終末旅行 コミック 全6巻

少女終末旅行 コミック 全6巻