言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

悲しきあるある「いきのこれ!社畜ちゃん」感想。

この記事をシェアする

f:id:Ziddorie:20190303193520p:plain

あるあるじゃ済ませちゃダメ!

いきのこれ! 社畜ちゃん

ブラックなIT会社でSEとして働く社畜ちゃんこと、佐倉桜花ちゃんにまつわる物語。終電始発は当たり前。デスマーチで上長は逃げる、サービス残業は当たりまえ、当然のように出社する土曜日…そんなブラック会社での出来事を描くマンガです。登場人物全員社畜…

登場人物みんな可愛い女の子になっていますが、マンガで語られる出来事は妙にリアル。それもそのはず、マンガの元ネタになっているのは原作者であるビタワン氏の実体験が活かされているのです。だから可愛い女の子しかいない職場なのに妙なリアルが感じられるんですよね。

このマンガには会社が辛いということだけでなく、会社はこうあってほしいという理想だったり、仕事のやりがいや自身の成長を描くエピソードもあります。かわいい女の子ばかりの職場で働きたいっていう理想と現実社会のブラックな側面を混ぜ合わせたマンガとなっています。

 

割とリアルな描写など

かわいい女の子ばかりの職場はもしかしたら原作者の理想なので現実にはありえませんが、そこはマンガ。魅力的なキャラクターがたくさん登場します。でもそのキャラクターが繰り広げるエピソードはなかなかにリアル。

例えばこの描写。会社に務めていないと絶対に描けないあるあるです。

f:id:Ziddorie:20190303191955p:plain

Image:いきのこれ! 社畜ちゃん(3) (電撃コミックスNEXT)立ち読みページより

特に古くてでかい会社では、タバコ部屋会議ってありますよね。あと常に喫煙所にいる謎おじさんとか。ちょっと前だと喫煙所でプログラムの仕様が微妙に変えられたり、追加されたりとヒドいもんでした。

まさに秘密会議がタバコ部屋で行われているっているリアルな側面を描いているんです。あと営業さんと一緒に外出したときの口八丁手八丁にびっくりしたり、朝に弱い先輩とか割とリアルな描写があるので、想像で描かれたマンガとは一味違います。

もちろんエンターテイメントとしての側面はちゃんと残してあるので可愛い女の子目当てで買っても楽しめることでしょう。もちろん会社勤めの人のほうがよっぽど楽しめると思いますよ。

 

現実世界での社畜ちゃん=自分?

翻って現実。マンガに描けないくらいの凄惨な労働環境がニュースなんかで取り沙汰されていますよね。こういったニュースってきっと氷山の一角。ヒドい労働環境をSNSなんかで晒しちゃう人も最近出てきていますが、それすらできない労働者ってのはきっとたくさんいるはず。

私にもそんな経験がありました。インターンシップの学生さんが私の職場に来たとき、学生さんがこう訪ねました。「会社を辞めたいって思ったことはないですか?」私は「ないと言ったら嘘になる」と答えたのですが、上長は「辞めたいって思っているうちはまだ大丈夫だ」と遠くを眺めながら答えたことに乾いた笑いしか返せませんでした。

きっと社畜ちゃんに自分を重ねて「あるある」とか「自分もあったわ〜」って共感がこのマンガの人気の根源なのではないでしょうか。それだけブラックな環境だったり、ブラックまで行かなくとも理不尽な要求や設計・納期・顧客に対面した経験が誰にでもあるってことだと思います。このマンガがこれだけウケているってことはそれだけ似たような、もしかしたらそれ以上のブラックな職場環境が日本に蔓延しているのでは…と考えを巡らしてしまうのです。

 

このマンガを読んでみて

このマンガと似たテーマのマンガが最近ちらほら見られます。それは日本にブラックな職場環境が増えた、もしくはマンガを読む層が社会人若年層に移り変わってきたためでしょうか。ただのマンガとして楽しむ以外にも、このマンガがウケる日本の社会についても思いを馳せることができる深い(?)楽しみ方もできます。思った以上に味わい深いマンガでした。

原作者のビタワン氏は会社勤めをやめ、現在はフリーランスとしてお仕事をされているようです。Twitterへの投稿が多く、リツイートしている内容も技術系のコラムや記事が多く、真面目なSE屋さんという印象を受けます。

twitter.com

また、気になるマンガ原作者の収入についてもこの記事で語られています。

biz.moneyforward.com

私も一時期は社畜ちゃんのような仕事をしていたので、マンガを読んでいると、社畜ちゃんの言いたいこともわかるし、「こんな職場で働きたかった…!」と思うこともありました。作中にあった「(プログラムは)動けばいいってもんじゃないんだよ!」ってセリフは背筋を正す思いでした。

働き方の変革*1が叫ばれている中、いつかこういったマンガが「ワシらが若い頃はこういった働き方があったんじゃよ…」って言えるような世界が来るのでしょうか…?

*1:個人的には働かせ方の変革だと思っています