言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

ヒトデの足はなぜ5本?無脊椎動物の進化の秘密「ウニもすごい、バッタもすごい」感想

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無脊椎動物の恐るべき生き残り戦略。

ウニもすごい、バッタもすごい

ちょっとおふざけが入ったようなこの本のタイトル。いい感じに力が抜けた帯のイラストに惹かれて購入しました。この本に書かれているのは無脊椎動物たちの体の作りや生き残り戦略についてです。

無脊椎動物は脊椎動物と違って動くための足を持っていなかったり、目や耳などの感覚器官を持っていないなど我々脊椎動物からしたら不便な連中だとも思ってしまいます。でもそれは人間の理屈。

足を持っていないのは歩かなくても餌の上に住んでいるから(ナマコ)、目や耳を持っていないのは餌の方から勝手に近づいてくるから(ウミシダ)なんです。無脊椎動物からすると食べ物のために駆け回っている脊椎動物のほうが不便な奴らだと思っているのかもしれません。

そんな環境に対して最適な進化を遂げているのが無脊椎動物たち。中には分子レベルで進化を最適化している動物もいます。読み進めていけば、高度に最適化された無脊椎動物の進化の秘密や驚きに遭遇することが出来るでしょう。

 

ヒトデの足はなぜ5本か?

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海にいる星型のあいつ。ヒトデ足の数は基本的に5本なんです。なんででしょう?3本でも4本でもなくて5本なんです。

こんな疑問、この本を買うまで気にすらしませんでした。人間の指が5本なことに疑問を持たないのと同じ様にヒトデの足が5本であることに疑問の余地がなかったのです。でもこの本はどうして5本なのか?ってところに切り込んでいきます。

なぜ5本足なのかの理由を全部書くと、とんでも無く長くなってしまうので書きませんが、部分的に言うと植物と同じ理由で5本になっています。要は効率よく食料にありつけるための最適化だったのです。

脊椎動物のように素早い移動が出来ない無脊椎動物はその分燃費を良くしたり、効率よく餌にありつけるように、あの手この手の進化をしてきたのです。

 

ホヤの衝撃

ホヤってイソギンチャクみたいなパイナップルみたいな海の生き物を知ってますか?刺し身にしたりして食べることもある脊索動物です。宮城県でよく取れるらしく、気仙沼では”ホヤぼーや”というゆるキャラもいるみたいです。

このホヤなんですけど、この本で紹介されている動物の中で一番人間に近い動物なんです。この提灯みたいな生き物が、です。これにはちょっと衝撃を受けました。

ホヤって卵から生まれた直後ってオタマジャクシみたいな幼体で海を泳ぎ回って、良さげな場所を見つけたら定着して、植物みたいな見た目に変態するんです。幼体の時は脊索(背骨のようなもの)を持っているので最も脊椎動物、つまり人間に近い無脊椎動物なのです。

こういった知られざる事実がたくさん散りばめあられていて、本を読み進めると、いろいろな驚きに出会うことが出来るでしょう。

 

無脊椎動物進化くらい気合の入った歌

途中でこの人の本をずっと前、中学校くらいに読んだことがある!と思い出しました。その理由が「歌」。この本、各章の終わりに歌が書かれているんです。章の終わりにあるのは歌詞だけですが、本の終わりに楽譜がついていて笑いました。

そういえば昔に「ゾウの時間ネズミの時間」って本を読んだなぁって、その本にも歌が書いてあったって思い出したんです。調べてみるとやっぱり同じ先生でした。

Wikipediaの記事にもシンガーソングライターとも書かれていて”歌う生物学者”としても知られているそうです。氏が歌う歌にはナマコへの愛が溢れています。

 

この本を読んでみて

この本に書かれている90%は無脊椎動物についてですが、最後の1章は脊椎動物について書かれています。おまけ程度ですね。

脊椎、背骨ってどうしてできたんでしょうか。生物が生まれた海の中は浮力があってクラゲのようなフニャフニャの動物だっているくらいです。体を支える背骨なんていらないはずです。そんなフニャフニャの動物に脊椎が出来ていく過程についても解説があります。

長い長い進化の過程でどんなふうに人間の祖先となる脊椎動物が生まれたのか思いを馳せることだってできます。この本を読めば、例えばナマコのことを足も目もない哀れなやつと思っていたとしても「結構すごいんだな、ナマコ」って考えを改めることでしょう。