馬がいなければ人類の発展はなかった。
馬の世界史
アレクサンドロス大王もナポレオンも織田信長だって馬に乗っていました。洋の東西を問わず馬は軍や戦争と切っても切れない関係にあります。戦争の歴史は人類の歴史。馬という動物の切り口から世界史を一通り振り返ることが出来るのが、この「馬の世界史」という本です。
そもそも馬は他の獣同様、食用とされてきました。それなのに、いつしか人間に手懐けられ、家畜や軍馬として人類史に欠かせない存在となりました。本書は最初に馬を手懐けた場所はどこか?といった有史以前の時代からスタートします。人間が馬の背中に乗った時から世界は”スピード”を増して動き出します。
馬は人間よりも速く走れます。そのため情報だって速く遠くに伝わります。馬は人間よりも重たいものを運べます。だから馬車を牽いたり戦車(チャリオット)を動かすことができます。馬の存在は想像している以上に、大きく人類史に関わっていたのだと感じさせられます。
馬の歴史での活躍を考えると、著者の言葉である「馬がいなければ21世紀もまだまだ古代だっただろう」という主張にも頷けることでしょう。
馬の背から人類史を振り返る
中学や高校の世界史の授業を思い返してみると、戦争の挿絵には必ず馬がいたように思います。上記のアレクサンドロス大王の有名な肖像画にも描かれていますし、時と場所は流れてナポレオンの肖像画だって白馬にまたがった姿が描かれています。人類史は馬とともに歩んできたようなものです。馬は軍馬として人類史に寄り添って来ただけではありません。
馬は軍馬として利用される以外では、エネルギーとして利用されてきました。18世紀に蒸気機関が発明されるまではエネルギー、つまりエンジンとして利用されてきました。そのエネルギーで素早く移動して情報を遠くに伝えたり、田畑を耕すこともできました。
戦争中でも平和なときでも、馬は重要な役割を担ってきました。だから馬の御する技術も非常に重要でした。乗馬技術に長けた民族といえばモンゴル民族ですよね。過去にはモンゴル帝国という世界最大級の帝国を気づきあげました。それを成し遂げられたのも馬のことをよく手懐けられたからなのではないでしょうか。
馬の存在が歴史に大きく影響した例は他にもあります。中国の歴史を振り帰ってみると、中国史は西側から大きな変化が訪れています。中国を最初に統一した秦は中国の西の山地という地理的に不利でしたが、どうして中国全土を統一できたのでしょうか?それは馬や乗馬に関する技術が中東、つまり中国から見た西から伝わったため、最も西にあった秦が馬の扱いを最初に習得して戦争で優位に立ち回れたのではないかと言われているようです。
馬の現在
18世紀に蒸気機関が発明されてからは、馬は戦争の歴史からは消えていきます。それでも内燃機関や飛行機が登場してから馬という存在は「馬力」という言葉を残しています。では、そこで馬はもうお払い箱になったのかと言うとそうではありませんよね。
今はスポーツとして乗馬があったり、ギャンブルとしての競馬があったりします。軍用としての役目を終えても馬と人間との関係は切れないわけですね。
海外の警察にも白バイではなく馬をパトロールに使っている国もあります。平常時には癒やしをあたえ、非常時には威圧感を与えるからだそうです。確かに道端に白バイに乗った警察官と乗馬した警察官がいたら2者の印象は大きく変わりますよね。
この本を読んでみて
普段は歴史に関する本はあまり読まないのでですが、この本を手にとったのはこの作品を読んだから。
このマンガでは先述した秦の始皇帝が中華統一を成し遂げるまでのドラマを描いています。軍馬や戦車が出てきます。そこで「こういった馬の利用ってそんなに昔から合ったのかな?そういえば最近読んだアレクサンドロス大王のマンガにも馬が描かれてたな…馬ってそんなに昔から世界各地にいたっけ?」と思い手にとったわけです。
本書はその疑問に間違いなく答えてくれましたが、いかんせん読者(私)に世界史の教養がなく、数ページに1度の頻度で「???」を浮かべながら読みました。すんなり読めたのはキングダムで予習していたところぐらいです。
とはいえ、馬の背中から東洋と西洋の歴史を包括的にまとめている本はとても貴重でしょう。過去にもそういった本はあったらしいのですが、東洋もしくは西洋のみに焦点を絞ったものだったらしいので、そういった本を著者も「イランより先はいらんのか(激ウマギャグ)」とあとがきで嘆いています。