言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

時計をめぐる歴史を振り返る「時計の科学 人と時間の5000年の歴史」感想

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見えないものを計測する挑戦の歴史。

時計の科学 人と時間の5000年の歴史

時間によって私達の生活はルール付けられています。朝何時に起きるか。何時に学校や会社に着くか。いつ帰宅して眠るのか。それらはすべて時間によって決められています。しかし時間の流れというものは目に見えません。そんな時間の流れを目に見える形にしたものが「時計」というものです。

時計は世界各国で共通の形をしています。数字や文字が異なる世界でも円と線だけで表すことのできます。時計がこのような姿になったのは意外にも近世。また、現在のように誤差が分単位未満になったのは、本当に最近のことだといいます。

この本のタイトルは「時計の科学」となっています。確かに科学的な要素はたくさん。でも、本書は人間が目に見えない時の流れをなんとかして計測しようとした試行錯誤の記録のように感じます。時計をより良くするために科学を使いましたが、科学の進歩にも時計は必須です。そういった意味では「時計と科学」と言ったほうがしっくり来るかもしれません。

時計という暮らしに欠かせない機械の深い歴史を読み解くことができますよ。

古くて不思議な時計の歴史

人間が時間を計測しようと試みたのは実はとても古い時代にさかのぼる事ができます。それこそ紀元前まで。

インドでゼロの概念を発見されたのは7世紀。時計はそれよりも何千年も前に日時計や水時計などが発明されていました。しかも文字盤も1から始まっていました。つまり、時計の発明のほうがゼロの発見より早かったわけです。もしゼロの発見がもっともっと早ければ時計はゼロから始まっていたかもしれませんね。

また、時計は12進数を採用しています。私達が利用している数体系は10進数なのに、なんで時計だけ12進数なのでしょうか。

これは親指以外の指関節を数えてみたら12個あるからだという説があります。確かに親指で指関節を触りながら「1,2,3…」と数えていくと片手で12まで数えられます。

更に時計の針の回る方向。時計の針は必ず右回りとなっていますが、これは北半球での影の動きが右回りだったからと言われています。もし時計が南半球で生まれていたら時計は左回りになっていたのかもしれません。

時計の正確さに必要なもの

現在のような形の時計が生まれる前はどのような形をしていたのでしょうか。時を計るということに利用されたのは太陽や重力などの自然のものでした。

太陽は日時計。重力は砂時計や水時計。変わったところでは、開花時間の差を利用した花時計などがありました。こういった時計はもちろん誤差も大きかったものの、だいたい30分程度の誤差範囲だったといいます。なかなかの精度ですね。

でも機械時計の精度には全然及びません。時計には3つの要素が必要なのですが、そのうちひとつが欠けているからです。

時計に必要な要素とは、

  1. 時計が動作するエネルギー
  2. 時間を刻む規則正しい振動
  3. 時刻の表示機能

日時計や砂時計に関してはエネルギーを太陽や重力で賄っています。また、影や砂などの表示機能も有しています。でも正確なリズムを刻む振動がありません。だから正確に時間を計測することができないのです。

時計の正確さを向上させるために、規則正しい振動というものをどうやって実現するか様々な取り組みがなされてきました。

例えばゼンマイと歯車。水晶(クオーツ)と電池。そして現在ではセシウム原子の振を利用しています。

ゼンマイ→水晶→原子の順に一秒間の振動回数が多くなります。原子時計に利用されているセシウム原子は一秒間に約92億回も振動します。この多くの振動回数によって正確な1秒を計測できるようになってきているのです。

進化する時計

100m走の日本記録は9秒97です。この時間ってなんだか変に感じませんか?だって時間は12進数で分は60進数なのに、1秒以下は10進数なのです。例えば9.30秒は9秒と1/2(30/60)秒ではなく、9秒と3/10秒なのです。

これは1秒以下の時間を正確に計測できるようになったのが、10進数が広く普及した現代で計測できるようになった時間単位だからだと言われています。

このように、過去の時計ができなかったことがどんどんできるようになってきています。先述した原子時計を使えば相対性理論で説明されている

「重力の影響が強ければ強いほど時間の進みが遅くなる」と現象いうを観測できるほどです。

地面と山の上であれば地球の中心から距離があるので重力のかかり方が僅かに変わります。低地であるほうが時間がゆっくり進むのです。最新の原子時計では高度差がわずか数センチであったとしても時間の進みの差異を観測できるといいます。

大地震で地球の自転がわずかに変化したり、うるう秒の調整が行われるなど、時計は今までにないほど高性能に進化しているのです。

この本を読んでみて

毎日必ず目にする時計。私達の暮らしに密接に結びついています。時計は正確性と手軽さを両立するようになり、近年では高級時計など資産的な価値を持つまでにいたりました。

高級な腕時計は車と同じ価格をするものも珍しくありません。機械式時計、特に腕につけられるほど小型化するのには大変な労力と技術的な挑戦が必要でした。そういった試行錯誤の末に生まれたから、こんなに高額になってしまったのでしょうか?

わたし個人としては、時間しかわからないデバイスに何百万・何千万も出費できる理屈がわからないのですが…腕時計つけるのだったら、時間以外に気温や通知、心拍数などがわかったほうがお得じゃない?って思うのはわたしにロマンが足りない?そんなわたしの左手首にあるのはapple watchです。

そんなスマートウォッチでも文字盤や外見は昔の時計とそこまで変わりません。時計が生まれて約5000年経ちますが、この長い長い時間の中で培われた価値観はスマートウォッチでも脈々と受け継がれているのでしょう。