言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

書評「かなり気になる日本語」感想|お手軽比較文化論

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情緒と忖度の国・日本。契約と実力の国・アメリカ。

かなり気になる日本語

”Why Japanese People?!”で流行った厚切りジェイソン氏による日本語と日本文化についてのツッコミをまとめた本。氏はお笑い芸人兼ITベンチャー企業の役員と異色すぎる経歴。文書の節々から地頭の良さがにじみ出ます。

この本を読んで見ると普段気にしなかったことに気づけます。まるで魚が周囲の水に気づいたかのようです。当たり前のように使っている日本語でも「外国人から見たらこんなふうに見えているのか」とか「そんなにこのことって不思議?」という発見をまとめています。

切り口は日本語ですが、中身は言葉遊びというより、文化的な考察に重点が置かれています。決して読むコントや漫才ではありませんが、気楽に読めることは確かです。日本人ではないからこそ気づけた日本の”かなり気になる”文化や習慣に切り込んでいっています。

 

気になる日本語たち

「足を洗う」←手を染めたのに?

「押忍」←「お」はようございま「す」の略?

「靴下」←No!靴中!

言われてみれば確かに気になる日本語たち。日本語に慣れ親しんでいる私達日本人からしたら「確かにそうかも…」と思ってしまいます。敬語やら方言やら気にしだすと際限ないですよね。

こういった慣用句以外でも、日本特有の習慣などについても語られています。日本に住んでいると当たり前のように思ってしまいますが、日本に時節の催しが多すぎるとも言っています。1月には正月、2月には節分とバレンタインデー、3月にはひな祭りに卒業式…言われてみれば多いかも…

そんなに毎月イベントごとをやっていたら準備が忙しすぎるよ!ってツッコまれています。でもそういった季節季節の催しを日本人はずっと昔から受け継いできました。こういった点に日本人に共通するといわれる情緒が生まれるのでしょう。桜の開花情報なんて他の国の人からしたら「そんなことより明日の天気はどうなんだ?」って思われるかもしれませんね。

 

作者の心境を述べよ

学生の頃、国語のテストで何度も目にしたこの「作者の考えを述べよ」とか「作者の心境を述べよ」という文書。ジェイソン氏によればこの問題が”かなり気になる”とツッコんでいます。というのもアメリカ人からしたら他人がどう思うかってよりも自分がどう思うかを理路整然と述べることのほうがよっぽど重視されるそうです。

小学生の頃から作者がどう思うかを考えるかってことは、他人に自分がどう思われているのかって誘導尋問するようですよね。他人から見た自分を想像するように教育しているのかもしれません。自分が思うのではなく、他人から品行方正に見えるようにしましょうねって。

日本人の他人をおもんばかる精神は他の国にない立派なものだともフォローする一方で、学生の頃からこんな訓練を積んでいるなんて、大人になってから偉い人忖度するめの習慣になるのでは?とも指摘しています。

 

契約と実力の国、アメリカ

翻ってジェイソン氏が生まれ育ったアメリカ。この本の節々からアメリカは契約と実力の国だと感じます。

アメリカは移民の国だから常識と言われる文化や習慣が無い(要出典)のでルールとなるのが法律と契約です。ジェイソン氏が日本でのビジネスの場で契約書をさっと読んだだけで印を結んだり、契約書に書かれていない義務まで親切心で対応してくれる日本のビジネスパーソンに心底驚いたといいます。

同じ様にその人の評価も実力のみで決まります。土台となる共通した文化的な共通点が無いので評価はその人の営業成績だったり、テストの点数だったりと割り切ったものでしか評価されません。こういった日本人からしたら残酷とも思える競争社会を国内で築いているのでアメリカは超大国となっているのかもしれませんね。

実力主義のアメリカのビジネスパーソンでもあるジェイソン氏の文面からは、契約と実力の国という印象を受けました。

 

この本を読んでみて

気軽に読める本としてもとても優秀ですが、それに加え見事に日本語を操るジェイソン氏の能力に驚かされます。もちろん校正は入っているにしてもすごいの一言。私が英語で同じ分量を書くだなんて逆立ちしても出来ません。(ジェイソン氏に言わせると逆立ちしたら「逆立ちしちゃったら、できるものもできなくなるダロウ!」ってツッコまれそうですが)

気になる日本語の一部にはきちんと解説がついていています。「なるほど」とためになる知識もついてきますよ。「どうして敬語がうまれたの?」って聞かれても私は答えることができませんでしたが、本書にはその理由も書かれています。

かなり読みやすくて私は1時間程度で読み終わってしまったのですが、気軽に読めるエンタテイメント性と日米の比較文化論をややエンタテイメントよりに両立された本でした。