言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

書評「手紙屋」感想。恐ろしく、無味。

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薄い。薄すぎる。

手紙屋

就活生向け進研ゼミのマンガの小説版のよう。料理で例えれば「ルーのかかっていないカレーライス」、「水がかかったかき氷」、「ウイスキーが入っていないハイボール」。

本の大枠としては、就活に悩む青年がひょんな事から謎の「手紙屋」との文通を通じて自分が働くということを見つめ直し、一度決まりかけた内定先を蹴り、ベンチャー企業に就職し、働く喜びを追い求めていくーーーみたいなストーリーです。

この本は私のこれまでの読書で今までにない体験をもたらしてくれました。「読んだ前と後で何一つ変わらない」という読書でした。この本を読んで得られたことはゼロ。途中苦笑いすらしながら読書をしたのも、この本が初めてでした。

読んでみようって思ったきっかけはamazonのレビュー。「私が読んだ中で最高の本だった」ってレビューを見て、そんなにか!って思って手に取りました。最近、就活生と触れ合う機会が多かったってのもあり、就活生向けの本ってこともあったのですが、社会人が読む価値は見つけられませんでしたし、就活生に読ませるにしても中身がなさすぎないか?って感想でした。

 

共感できた点

この本に書いてあるのは「近江商人の三方良し」と「3人のレンガ積み職人」のお話。このお話を200ページほどに薄めて、必要かどうかわからない小説風味を足して完成!

知らない人向けに解説しますね。近江商人の三方良しってのは「売り手良し、買い手良し、世間良し」の3つの「良し」のこと。売り手も買い手も満足でき、社会貢献もできるような商いが最も良いという考え方。

3人のレンガ積み職人ってのは病院や教会を作る3人のレンガ積み職人のモチベーションの違いの話。とある旅人がレンガを積む職人に尋ねた。「あなたは何をしているんですか?」職人の一人はこう答えた「レンガを積んでるんだ」。次の一人はこう答えた「これが仕事なんだ。妻と子供を養わないといけないんでね」。最後の一人はこう答えた。「俺は病院を作ってるんだ。すごいだろう?ここで病気の人が元気になっていくんだぜ!」。明確なゴールビジョンを持って働くことでモチベーションを保つことができる。

この2つのテーマを手紙屋はあの手この手の例え話で青年に伝えてきます。あまりにもたくさん例え話が出てくるので「あぁ、はいはい三方良しね」って途中から読書スピードが上がります。

 

いやいや…って思った点

実はあんまりないんです。だって当たり前のことがつらつらと書いてあるから。でも強いて言うならかなり序盤ででてきた「人には称号を与えましょう」っていうくだり。いやいや、それ一番やっちゃだめなやつじゃね?って苦笑いしたのを覚えています。

本では「あの人は優しい」という称号を与えたら本当に優しく感じるからそうしましょうみたいなことが書いてあったんですけど、要はこれ人にはレッテルを貼りましょうってことですよね。

そのレッテルがポジティブなものだから称号って言ってるだけであって、最初から決めつけで行動しましょうって言ってるようで、1ミリも共感できませんでした。しかもこの称号のくだり、その後のストーリーにあまり出てきません。なんで書いたし。

 

この本を読んでみて

途中何度も本を読むのをやめようかと思いましたが、間違った決断をしたのは自分なので、最後まで読み通しました。読了感は「そりゃそうだろ」。赤信号は渡らない。お酒は20になってから。って色んな例えを使って説明されたかのようです。

何故か手紙屋は謎の人物っていう設定にしているので、ちょっとは楽しめるかな?って思いましたが、大して小説としても面白くもなく、別に小説風味にしなくても良かったんじゃない?紙も少なくて済むよ?って思うほど。そして素性の知れない手紙屋の言うことに感化されまくって行動をコロコロ変えていった主人公の青年をみて、彼がたちの悪いセールスやキャッチに引っかからないか心配になります。まるで子供の頃読んだ進研ゼミのおまけマンガの小説版です。

「近江商人の三方良し」と「3人のレンガ積み職人」のことを知っているのであればあえて読む必要はないでしょう。また、就活生におすすめ!ともされていますが、内容がお花畑すぎるので参考にはならないと思います。特に理系の人には。

書いてあることはすごくマトモで正しい(だからこそつまらない)んですが、それを200ページ超の小説風味にしなくても…と作家の先生に手紙を書きたくなるような感想でした。