言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

文書の読み書きはキャッチボール|「読む技術」・「日本語の作文技術」感想

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書かれ方を知って読み方を知る。

自分は読み書きができているのか?

過去に紹介した「AI vs 教科書が読めない子どもたち」という本を読みました。

www.nenzop.net

その本の中で読解力テストを実施したのですが、中高生の読解力がサイコロレベル(つまり運任せの正答率と同じ)という事がわかりました。私自身も危機感を抱いたので、一度「読む」という行為を見直そうと考えたのです。

そこで手にとったのが「読む技術」という本。

この本を読んでいる内に「読む」という行為を見越して「書く」ことが重要なのでは?と思い、この本を読み終わった後は、書く技術に関するベストセラー「日本語の作文技術」を読みました。

両方の本を読み終わって感じたのは、読むということと書くということは表裏一体で、どちらがかけてもいけないということでした。

投げるのがうまいだけではキャッチボールは出来ませんよね。逆に捕球がうまいだけでもキャッチボールは出来ません。どう捕球されるのかを知り、どう投げられるのかを知ることでよりよいキャッチボールが生まれます。それは文書だって同じだと気づいたんです。

 

書く(ボールを投げる)技術

「日本語の作文技術」では日本語をわかりやすく、正確に書くための具体例をたくさん読むことができます。その具体例を見ながら、これはこういったところが良いので読みやすい。と解説がされているので正確な文書を書くコツを教わることができます。

中には悪文と評される文書もあり、なぜそれが悪文なのか辛辣に解説されています。悪文たる理由は様々な理由がありますが、一番多い原因が修飾節の係り受けの問題。例えばこういった文書がこの本の中に現れます。

私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った。

本多 勝一. <新版>日本語の作文技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.322-323). Kindle 版.

この文書では誰が何をしたのかまでが離れすぎていて一読しただけではわかりません。こういった文書の処方箋は「修飾される側と修飾する側」を近づけてあげるということです。

鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのか私はと思った。

本多 勝一. <新版>日本語の作文技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.328). Kindle 版.

 他にも悪文をわかりやすい文書にする技術として「、。」の使い方があります。例えばこの文章。

Aが私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。

本多 勝一. <新版>日本語の作文技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.973-974). Kindle 版.

なるほど、意味はわかりますが少しつっかかりますよね。この文書に読点(、)を打ってみるとどうでしょう。

Aが、私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。

本多 勝一. <新版>日本語の作文技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.976). Kindle 版.

読点を付くことで「誰が」という部分が強調されて読み下しやすい文書になります。

このような実践的な技術がぎっしり詰まったのが「日本語の作文技術」という本です。この本を通してどの様に書けば読み手が理解しやすいかということを訓練することができます。キャッチボールで言えばうまくボールを投げる技術を磨けるわけです。

 

読む(ボールを受ける)技術

「読む技術」では普段何気なく行っている「読む」という行為に焦点を絞って解説した内容です。この本には読書の種類として、速読・味読・精読の3種類が挙げられており、それらに対して有効な「読解ストラテジー」という読み方8つが紹介されています。

読解ストラテジーの解説は実例が少々くどい(20秒で読んでみましょうなどの練習があり、移動時間などには読みにくい)ところがありますが、状況に応じて使い分けるという読書の考え方は読むという行為の再発見でした。

新聞などの読書(速読)では段落最初の文書に注目するであるとか、漢字をかいつまんで読むなどのテクニックが紹介されています。また、小説などの読書(味読)では視座(どこで)・視点(だれが)・注意点(なにを)を意識すれば、より物語を楽しめるという読書の幅を広げるコツなど、読書全般を楽しめるような技術を身につけることができます。

こういった読書の種類や読解ストラテジーを知ってしまうと「ここはよく読んで(精読して)ほしいので、こういう書き方をしよう」という書くことへ意識が生まれます。漢字とひらがなのバランスや読点の打ち方などを考える「書く」ための本でもあります。

私はこの本で「読む」キャッチボールでいえば「捕球」がうまくなるのではと思ったのですが、それに加え、こう読んでほしいからこう書くという「投球」の方法も学んだように思います。

 

人に読まれる文書を書くには

人に読ませる気がない文章(メモや日記)では書く技術は必要ありません。だって自分が読んでわかれば良いのですから。

でも誰かに読んでもらう文書はそうはいきませんん。「どんなふうに読まれるのかを想定し、それに合わせて書く」という考え方が必要です。その考え方の指針になるのが、今回紹介した「日本語の作文技法」と「読む技術」でした。

「読む技術」では読書の方法の他にも、そう読んでもらうためにはこう書くという「書く技術」も学べました。読み書きはまさにキャッチボール。受け取りやすいようにボールを投げ、投げ手の動きを観察してボールをうまく受ける。投げと受けの2つの技術で読んでもらえる文書が出来上がるのだと思いました。

 

これらの本を読んでみて

www.nenzop.net

「AI vs 教科書が読めない子どもたち」から触発されて読んだ2冊の本を一挙に紹介しました。当初は読解力を養うために「読む技術」を買ったのですが、読む行為は想像以上に書く行為と結びついていたと感じました。特にこんなふうにブログを書く人なら。
AI vs 教科書が読めない子どもたちで触れられていたような「読解力」をより高めるためには読む技術も重要ですが、どういうふうに日本語は書かれるのかという書きの技術も同じくらい重要だと感じました。「読み」と「書き」の両輪で読解力は向上していくのでしょう。

読み手のことを考えない書き方は、キャッチボールというよりかは壁当てに近いですし、読み取る力がなければ軍手をグローブ代りにしているようなものです。ネットの片隅でひっそりとブログを書くにしても、この2冊の読書はたいへん参考になる良い経験となりました。