言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

書評「『春秋』うちあけ話」毎日のコラムはこうやって作られる。

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春秋はフレッシュなネタの4コマコラムである。

「春秋」 うちあけけ話

新聞の第一面にかならずあるコラム。

朝日新聞なら天声人語、毎日新聞なら余録。

そして日経新聞のコラムが春秋です。

 

以前、春秋を書き写していたのですが「毎日のコラム、誰が書いているんだろう」って疑問に思っていました。

www.nenzop.net

この本はそんなコラムの「中の人」のお話。

どんな時事ネタを選び、どのように仕上げるのか、そんな苦労の「うちあけ」話が柔らかい文調で語られます。

その日の新聞の記事は全て読まなくてもコラムだけは読むって人は多いはず。

そんなコラムを仕上げる記者の苦労を垣間見たいなら、この本がおすすめです。

春秋とは4コマコラムである

春秋は他のコラムと比べて約550文字短く、4段落で構成されています。

以前は起承転結っぽくていいなって思っていたのですが、起承転結とは微妙に違いました。

起承転結というよりも4コママンガ・落語みたいな構成に近いとこの本には書かれています。

 

実際、意識して春秋を読むとそのとおり。

  1. 雑談っぽく始まる導入が1コマ目
  2. テーマとして解説する2コマ目
  3. そのテーマに対する意見を述べる3コマ目
  4. 1コマ目を拾いつつ話を締める4コマ目

特に春秋では導入、落語でいうマクラが毎回豊富で書き手の引き出しの深さを感じさせます。

関連する本

文書を書くには読み方、読まれ方を理解したほうがいいと著者は語ります。

読み方を解説した書籍はこれまでにたくさんありましたが、この本で紹介されているのが「文書読本」です。

1982年に発行されたのに、現在も読みつがれるこの本。

文書を書くプロもお手本にしているくらいの本です。

そして、そんな「文書読本」を愛でディスった解説本。合わせてどうぞ。

この本を読んでみて

春秋を書き写しているとき、思い出に残っているコラムがあります。

それが日韓関係が悪化したときのコラム。

当時、そのコラムが炎上して2chにもスレが立つくらいの燃え上がりっぷりでした。

 

この本にも、その炎上話が書かれており、下記のように説明しています。

清水幾太郎は「無闇に烈しい言葉を用いると、言葉が相手の心の内部へ入り込む前に爆発してしまう」と述べています。この現象が、いまで言う「炎上」でしょう。

大島三緒. 「春秋」うちあけ話 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1615-1616). Kindle 版. 

また、言葉による説明の難しさを下記のようにも説明しています。

いわく「逆説を書いて、結論でちゃんとうまく落としてあるつもりでも、その逆説だけを真にうけて大憤慨してくる人もある」。理解と誤解は紙一重です。

大島三緒. 「春秋」うちあけ話 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1692-1693). Kindle 版. 

文書という、自身の分身を使って何かを説明する。という難しさはプロでも感じるようです。
サムネイル画像はamazon商品ページより引用。