言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

いろんな国の出会いと別れを繰り返す魔女に思いを馳せる。”魔女の旅々”感想

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ちょっぴり毒舌な魔女の一人旅物語。

魔女の旅々

いろいろな国を箒にまたがって渡り歩く(飛ぶ?)イレイナという魔女がその国々で起こる出来事やトラブルに巻き込まれたり、首を突っ込んだりしてしまう短編集。

お金に流されやすかったり、目先の利益に飛びつくイレイナに妙に親近感を覚えるのはわたしだからでしょうか。一人称で語られる物語調はサクサクと読み進めることができます。

短編集ということもあって短い時間で1エピソード読み切れるので、とても読みやすいです。

 

旅先で大変な目にあっても軽い毒舌と一匙のシニカルさで飄々と次の目的地へ渡っていきます。さっぱりとした語り口はサクサクとした読み口を加速させます。

話し相手もいない道中は何を考えているのか、どんなことをしているのか思いを馳せるのも楽しいです。

 

また、若いイレイナがどうして一人旅をしているのか、そして旅先で出会う人物や風景がゆっくりと語られます。

そんなイレイナの昔話も劇中では少しずつ語られていきます。物語はバラバラの短編集で成り立っていますが、全体としてはひとつの大きなストリートして進んでいく、そんな空気をまとっています。

本当に一人旅

イレイナが使っている魔法の箒がエルメスみたいに喋ってしまうとキノの旅の魔女バージョンになってしまいますが、イレイナは本当にひとりで旅しています。

最初この本を手にとったときも「なるほど、キノの旅の魔女版ね」と思ったのですが、その認識は当たらずとも遠からずといったところ。

確かに作品のコンセプトは非常に似通っていますが、こういった短編集は古今東西ありふれていますからね。

 

物語は基本的には訪れた国での出来事が語られるのですが、時折移動途中の描写があるのもいいですね。イレイナが住む世界はどんなものなのかを垣間見ることもできますし。

基本的に登場人物は1エピソードっきりで2回以上現れることは稀。一期一会の一人旅を続けるのは気楽で羨ましくもあり、同時に別れも寂しくも感じます。

良い出会いも悪い出会いも基本的にそのエピーソドだけ。

 

注意深く読んでいると実は短編同士が微妙に繋がりを持っていて、1巻全体がひとつの物語のようになっているものもあります。

関連する本

筋肉は旅先でのトラブルを解決する。これは現実世界でも変わりのないことでしょう。筋トレは最強の解決方法である。

魔女の旅々のような中世っぽい時代でも自重で十分筋肉は鍛えることができます。レッツ筋トレ!

明治時代くらいの日本を旅する薬師が主人公の物語。魔女の旅々は魔法がありますが、こちらのマンガは蟲という特殊な能力を持つ生き物を利用したり、されたりする短編集です。

魔女の旅々が気に入ったらこういった作風も気にいるはず。

この本を読んでみて

わたし自身、一人旅が好きだということでこの本を手にとったのですが、サクッと読めるので旅のお供にはボリューム不足。1冊を読み終わる時間は新幹線で言うなら東京名古屋間で読み終わっちゃいます。

通勤通学中に「旅してぇなぁ…」って思いながら読むのが良いでしょう。

 

ときにトカゲの尻尾切りの如くバツンと終わってしまう物語もありますが、そんな旅として捉えれば、ありなのかな?と思えてしまいます。

イレイナが去ったあとのあの街はどうなったんだろう…って思いを馳せるのに必要十分なドラマを提供してくれます。

 

さまざまなメディアミックスも始まっていますし、かんたんに読める小説ですので、おつまみ感覚で読んでみるのはいかがでしょうか?

この記事のサムネイルはamazon商品ページより引用しました。