のすたるじあ
ライトノベル全盛期(初期)
ライトノベル…今や市民権を得た感がある中高生(建前)向けのコミック小説的存在。初めてライトノベルを読んだ時は「これは文字のマンガだ…」って思った人もいるのでは?いやいや、携帯小説(死語)に慣れ親しんだ人からしたら全然小説だって!って思うかもしれませんが…
オタクボーイがハマりがちな設定や大好物なシチュエーションをチラつかせて地引き網をやっているこのライトノベル。例に漏れずパソコン部の部長だった私もドハマリしましたよね。折しもライトノベルのブームに着火したばかりの2000年台前半。キノの旅・灼眼のシャナ・ゼロの使い魔・まぶらほ・フルメタル・パニック…こんなアニメ化タイトルが現役で連載していたときの時代です。
ラノベにゲロバマりした私は毎月1日(角川スニーカー文庫新刊発売日)、10日(電撃文庫新刊発売日)、25日(富士見書房新刊発売日)は如何にお小遣いをやりくりするか腐心したものです。そんな私もそこそこに成長して20代を迎える頃には「ラノベ?はw?(嘲笑)今時クトゥルフっしょ、コズミックホラーっしょ。ラヴクラフト神だわー」なんて色々こじらせていました。ちなみにその後、一回転ヒネリして「SFマジ至高だわ…」となってJ・P・ホーガンやアシモフ、ハインラインを経て今に至ります。
時は就職してそういう(マンガ・ラノベ)部署に配属されて未だに私がゲロバマりしていた時の作家が最前線で活躍していることを知り、久々にライトノベルを手にとって見ました。
甘城ブリリアントパーク
賀東招二さん、フルメタル・パニックの人が書いている作品。ふもっふのノリを全開にした様な作風。改行超多め。フルメタル・パニックとキャラがリンクしているのがOBに直撃。
フルメタル・パニックの長編と番外編の硬軟入り混ぜた作風はグイグイ引き込まれます。一気に最新8巻まで読んじゃいましたよ。が、2年以上新刊が出ていないんですね…新刊はよって気持ちをこの年になって抱くなんて賀東招二恐るべし…フルメタの新作が忙しいからかもだけど新刊はよ。
なんか今のアニオタ界のジャーゴンが散りばめられていて、おっさん世代には「?」ってなることが多かったのですが、ナウでヤングな世代にはドッカンドッカンきてるんだろうなぁ…あと挿絵って単色刷りでもここまでキレイに出るんだ!ってくらいキレイに印刷されていました。
ゲーマーズ
葵せきなさん、マテリアルゴーストの人が書いている作品。超今っぽいゲームの話。いや、我々世代はPS2世代だったのでゲームは普通にあったのですが、このゲーマーズは割りとスマホゲームがバンバン出てきて今っぽい。私達世代はガラケーでゲームなんて「ん!」くらいしかなかったのに…
これまた改行多め。作風変わったのかなぁ…いや、生徒会の一存からしたらそうでもないか。文書のマンガを上手く体現しているテンポの良さ。アンジャッシュのコントを見ているみたい。
生徒会の一存みたいな中二な設定もなくてギャグメインで読めるお手軽なライトノベル。お手軽なライトノベルって馬から落馬するみたいな語感ですが、今っぽいラノベに上手く適応した古参ラノベ作家のワザマエが光る作品です。
この素晴らしい世界に祝福を!
このすばの略称で親しまれているこの作品。どうやら最近は異世界転生が流行っているらしいってことで購入したのがこの作品。ちなみに私は後述する作品と勘違いして購入したのですが、結構面白い。
異世界転生ジャンルの嚆矢と言える時期に発表されたであろうこの作品。やっぱりジャーゴンが多め。スライムってこういうやつだよね!とかオークってこういうやつだよね!っていう前提知識が無いと厳しい所もありますが、2000年台前半のノリを色濃く残した作品。
ギャグメインの作品が続いて日常系のマンガっぽく読めるのがいい所。誰も死なないし不幸にならない。そういう世界は祝福されるべき。読むギャグドラクエっぽくてサクサク読める。
Re:ゼロから始める異世界生活
タイトルからしてこっちがゆるふわラノベかと思っていたので、間違ってこのすばを購入してしまうという事故を起こしてしまったのがこの作品。今の王道ラノベって感じ。
剣と魔法の世界という中高生が飛びつきそうな感じ。でも世界観は非常に厳しい。久しぶりに夢中になって読んだラノベがこれ。ただシャナっぽくストーリが長引くに連れて「あれ?アイツどうなったんだっけ?」っていうダレが始まりつつあるところが危険。
灼眼のシャナやゼロの使い魔だって途中から専門用語や人物の背景がわかってて当たり前みたいな雰囲気が漂いだしているのがアブナイアトモスフィア。ニュービーが取り込みづらいシチュエーシヨンを醸し出し、おぉ…ナムアミダブツ!終いにはリゼロヘッズばかりの読者層に!ってならないか心配。(ニンジャヘッズ重点)
久々のラノベがこれ。
う~ん。これがナウでヤングな中高生が夢中なライトノベルだったのだろうか。全部に対して思ったのがジャーゴンの多さ。「ジャーゴンってなによ?」って人向けに解説すると、身内の間でしか通じない専門用語や了解のこと。
SSRは中々出ないし、最新のゲームは追っかけてて当たり前、スライムは弱キャラだし、オークは女騎士を犯すし、女騎士は結局は快楽に屈するみたいな…そういう前提条件がないと100%ライトノベルを楽しめないってのは感じます。
逆にそういった前提知識はどういった所で仕入れるんだろう…こういうバイアスは中高生の間にはびこっているんだろうか?もしくは彼らがアクセスするコンテンツにそういった情報がサブリミナル的に仕組まれていて、そういう風に調教されてしまうのだろうか…
判で打ったような設定が…と言うのはこのたった4作品で語るのは傲慢すぎるにしても、ここに紹介したすべてのライトノベルは通常の小説と比べてありえないほど改行が多い。読み手にページにギシッと詰まった文書を読む能力が無いのだろうか。もしくはそういう流行りだろうか。
大体のページがスカスカ。詩集かな?って思う程度にはスカスカ。その原因として会話劇が中心ってところ。会話を頻繁に挟むことでラノベの軽快なテンポを保っているって思います。会話劇の最たる例が語尾。「~~ですわ」とか「~~だァ」みたいな特徴的な語尾。これって地の文で”〇〇はこう答えた”っていう説明を省くためなんじゃないかな?って思うんです。単に作家がキャラの書き分けが出来ないってわけじゃなくて(そうかもしれないけど)、テンポを保つためのテクニックなのかなって思います。
でも会話劇だけだと人物が背負っているものや背景が分からない。だからこそのジャーゴン。女騎士ならばドMとか騎士なら誠実とかの暗黙の了解があるからこそこの、この仕上がりなんだと思います。ジャーゴンや暗黙の了解を理解した上で100%楽しめるってのは、ある意味の教養を求められているのかもしれませんね。
最後にラノベOBが一言申すとすれば「ミナミノミナミノ第2巻はよ!」