言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

コミックレビュー「ゴールデンカムイ」:ジビエなグルメとアイヌ文化漫画

この記事をシェアする

f:id:Ziddorie:20180424232550p:plain

ジビエなグルメとアイヌ文化をどうぞ。

ゴールデンカムイ

金塊を巡る漫画以外にも本格グルメ漫画としても楽しめる。舞台は明治(西暦1905年ぐらい)の北海道。日露戦争が終わった直後の時代設定。金塊を巡って男たちがバトルを繰り返しながらストーリーが進んでいきます。

 

個人的には金塊を巡るバトル漫画というよりかはアイヌの民俗文化を垣間見ることができる貴重な漫画だと思っています。アイヌ語はもちろん、アイヌの神話的なエピソードも語られていて読んでいて、金塊を巡るバトル以上に引き込まれてしまいます。

 

この記事を執筆時点で既刊15巻とかなりの長編漫画となってきていますが、一気に読み進めてしまうような魅力がこの漫画にはあります。私も最初の1巻を読み始めたら一気に5巻までポチってしまい、5巻からは最新刊まで一気に買ってしまいました。

 

アイヌ文化とバトル漫画の融合

f:id:Ziddorie:20181028153801j:plain

Image:ゴールデンカムイ10巻 Amazon立ち読み部分から引用

一気に全巻買ってしまうほどの魅力は、金塊を巡るバトル漫画っていう大枠を維持しながら明治の北海道の景色や人々をありありと描き、アイヌが暮らしていた文化的、民族的な背景を織り交ぜているってところにあると思うんです。

 

例えば上記の画像一つ、例にあげてみても「クトゥマ」という料理の解説だけでなく、クトゥマを乗せるお皿の紋様なんかもきちんと描かれています。アイヌ語って文字がなくて文化の保存が難しいって聞いたのですが、よくここまで調べ上げたと感心してしまいます。

 

あと自然に基づいたアイヌの文化や神話がとてもおもしろい。でもそういうアイヌ語やアイヌ神話ばかりを取り上げた漫画だと正直退屈してしまうかも知れない。だからこそ、金塊を巡るバトル漫画と合わせて飽きのこない作品になっているんだと思います。

 

おぉ、ヒンナヒンナ

アイヌ文化って日本人に虐げられた人々って中学・高校で習った覚えがあります。でもゴールデンカムイに出てくるアイヌの人々は、なんというかもっとこう、生き生きとした人々です。

 

誰にいじめられるわけでもなく、ただそこに住んでいて独自の文化を持ったアイヌの人々の暮らしをそのまま垣間見ることができます。アイヌ語だってそのままカタカナに変換されています。「タンペ アエ エアカイ オソマ ネ ナ」。ね?意味分かんないでしょ?

 

無学を晒すようで恥ずかしいのですが、アイヌ語って何なら日本語の方言的なものなのかな?って思っていたのですが、全く別の言語でしたね。もちろん日本語訳も併記されていますのでご心配なく。

 

例えば食事に感謝する「ヒンナ」というという言葉。日本語の「いただきます」とか「ごちそうさまでした」みたいな言葉で、ゴールデンカムイのかなり初期に出てくるアイヌ語です。アイヌの文化では狩りをするとき、獲物は人間に狩られるためにわざわざ現れてくれると考えられていたそうです。だからこの言葉が生まれたんじゃないかって、思いを巡らすことができます。

 

この漫画を読んでみて

金塊を巡るバトル漫画以上にアイヌ文化の解説に引き込まれる、この漫画。2018年夏にはアニメ化されたようです。アニメは終わってしまいましたが、原作はまだまだ続いています。どんどんストーリーが続いていきますが、アイヌ文化やジビエ料理の頻度は変わらないまま。レタは元気にしてるかな?

 

そして悲しくて切ないのが、この漫画で描かれたアイヌの文化がことごとくこの世から消えてしまったってこと。印象的なセリフが10巻にあります。

弱くなんかない アイヌの女だってしたたかなんだ このコタン(村の意)は必ず生き返る

引用元:ゴールデンカムイ10巻

悲しくも歴史的にはそうはなりませんでした。21世紀には往時のアイヌの生活をかけらも見つけることが出来ません。写真のインクの染みとなった人々の暮らし。たった100年ちょっと前なのに。北海道に暮らしていたっていう残り香を地名から思いを馳せることしか出来ません。

 

バトル漫画の他にもアイヌ神話やアイヌ文化を楽しめるという1粒で2度美味しいゴールデンカムイという漫画。かなりおすすめです。