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書評「What if ?」もしそれを実際にやったら?

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アメリカ版空想非科学本。

What if ? : 野球のボールを光速で投げたらどうなるか

ネットを通じて著者に届いた「〇〇をXXしたらどうなりますか?」っていう質問に科学的に、そしてできるだけ面白く解説した本。著者のランドール・マンロー氏の真面目さとジョークのセンスが光ります。

 

10年くらい前に流行った空想非科学本ってありましたよね。こちらは日本のアニメや漫画の設定を現実的に解決しようとしたらどんなことが起きるのか?っていう本。そういうノリの本だと思ってもらうとピンとくるかも知れません。

 

ただ、現実的に科学に則って質問を解説するだけじゃなくて、著者の描く棒人間がいい味出しています。目や鼻はないのに憂いや絶望を感じさせます。著者の解説力にも驚きますが、どうしてそんなぶっ飛んだ質問が出てくるのかっていう質問者の精神状態にも注目。 

 

単純な疑問から哲学的な疑問まで…

どんな質問がこの本に解説されているのか、簡単に紹介していきます。

 

まずはタイトルにもなっている「野球のボールを光速で投げたらどうなるか」って質問。現実問題として、質問が現実的ではないことはさてき、物質が光速で運動することはできないので光速の90%で野球ボールを投げたらどうなるのかっていうことになっています。ボールの前面にある空気分子はボールを避ける時間的な猶予がないのでボールの分子と核融合して…

 

次に「高く投げる」。これは人間がものを投げるとして最大どれくらいの高さまで投げ上げる事ができるのかっていう質問。挿絵のキリンが可愛いのと、割と大真面目に議論をした後の5才児でもその記録を打ち破れるっていうジョークが秀逸な回答。

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Image:ワット・イフ?ーー野球のボールを光速で投げたらどうなるか

 

ちょっと変わり種(変わり種じゃない質問はないけれど)なのが「中性子弾丸」。中性子星と同じ密度の物質で作った弾丸は地球上でどう振る舞うのか?っていう質問。中性子星って角砂糖1つ分の大きさで自動車1つ分の重さを持つような超高密度な星。そんなものを地上においたとしたら…

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Image:ワット・イフ?ーー野球のボールを光速で投げたらどうなるか

 

どうしてそんな疑問を持ったのか…

著者の解説力にも驚かされるのですが、一体どうしてそんな質問を考えついたのか?って言う質問もたくさんあります。

 

そんな質問者の発想に驚いたのがこれ。「一定のペースで昇りつづける」。例えば超自然的な現象で1秒間に1フィート(約30センチ)ずつ空に落ちていく事になったら、どういう死に方をするのか?っていう質問者の精神状態がやや心配になる質問。

 

次に「半分空のコップ」。コップの中に半分水が入っているとして楽観主義者と悲観主義者で捉え方が全く違うってのは、たとえ話としてよくある話ですが、この質問では本当に「空」だった場合の話。つまりコップ半分に水、もう半分が真空だった時のことを考えます。しかも水がコップの下半分にある場合と上半分にある場合分けもしてあるのも面白いところ。想像外の現象が起きます。

 

最後に「元素周期表で現物を作る」。各元素をキューブ状に固めて、それを元素周期表のように並べたらどんなことが起きるのかっていうのを解説した質問。最終的に致死的な終末を迎えるのですが、それがいつか?ってのが気になる所。

 

どんな質問にも真面目に答えます。

その質問がどんなに馬鹿げていたとしても、真面目に答えるのがランドール・マンロー氏。質問の中には「大泣きのしすぎで脱水症状になることはありますか?」っていう悲しい質問もありますが、「大丈夫?」って優しく声をかけています。

 

大学卒業後NASAに勤めてウェブコミック作家に転身した著者の丁寧な解説とちょっと毒のあるイラストでちょっとだけ賢くなれる本ですよ。