意外と知らない縁の下の力持ち「土」とは?
土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて
この本は土に関して書かれた本です。そう「土」です。地味なテーマですよね。でも、わたしは土についてどれほど知っているのでしょう。
そんな地味な土についてユーモアたっぷりに語ってくれるのは、土を研究している藤井先生です。
この本を手に取るまで知らなかったのですが、世界中の土は12種類に分けることができるのだそうです。
それぞれの土には全く異なる特徴があり、土壌によって植生は全く異なります。
土壌は住む人の暮らし、文化をも大きく左右しています。時には国運を左右するほどの要因にもなりかねないのです。
例えば、土によってその国で取れる作物や資源の種類が変わるので、争いの原因にすらなりうるからです。
人口増加はまだしばらく止まりそうにありません。増えた人口を養うだけの養分が土に残されているのか、不安にすらなる内容にも触れられています。
いつも当たり前にあるように思っている「土」。そんな土について考え直すいい機会になる本でした。
土が悪けりゃ白菜1つが1,800円
地球上にある12種類の土のうち、永久凍土という土があります。学校の地理の授業で習うので覚えている人もいるのではないでしょうか?
永久凍土とは2年以上連続して温度が0度以下である土壌のことを言います。
永久凍土と言いながらたった2年で「永久」を名乗れるなんてずいぶん気の短い話ですね。
そんな永久凍土では土が凍っているので植物が育ちません。
そんな地域に住む人達が野菜を食べるためには遠くから野菜を運んでこなければ行けません。
輸送費コミコミで生鮮食品の市場価格はなんと日本の10倍以上。
黄色くしなびた白菜がなんと1,800円でスーパーに並んでいるのです。
そのため、狩猟生活が近年まで続いていたとのこと。
「永久凍土に住む人は大変ね…」って人ごとではないんです。
日本のように野菜が育つ土壌を持つ地域は限られています。どれほどかというと、
支える人口が多い土壌のトップ3は、粘土集積土壌、強風化赤黄色土、若手土壌だ。この3種類の土壌が陸地面積に占める割合は30パーセントに満たないが、世界人口の半分を養っている
藤井 一至. 土 地球最後のナゾ~100億人を養う土壌を求めて~ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1344-1345). Kindle 版.
というほどです。
たった30%の土壌で世界人口の半分を養っているのです。
その一方で地球の人口は増え続けています。
その時、食べ物だけではなく、食べ物を育てるための土壌が不足してしまうことは十分予想できます。
100億人を超えるとも言われる世界人口が現実のものとなったとき、食べ物を巡る争いは肥沃な土地を巡る争いに置き換わるのかもしれません。
スコップで土を掘る仕事のゴールは…
藤井先生は裏山から研究を土の研究開始し、北米や東南アジアへと活動の範囲を広げていきました。
土壌の断面がよく見えるようにスコップで地面を掘るのですが、その掘りっぷりがだんだんと上達していくのがわかります。
最初の頃は断面がガタガタしていたのですが、本が進むに連れ、スパッと切り取ったような断面になっていきます。
土壌を調査するためにはどうしてもスコップの出番があります。
この本を読んでいて、強烈に印象に残った文書がスコップに関するものでした。
スコップで土を掘る仕事の最終目的は、スコップで掘らずとも土を予測できるようになることだ。
藤井 一至. 土 地球最後のナゾ~100億人を養う土壌を求めて~ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1304-1305). Kindle 版.
この言葉は技術・研究職についている人ならばぐっとくるのではないでしょうか。
自分の仕事に置き換えて考えてみると、新たな気付きやモチベーションの向上にもつながると思います。
この本を読んでみて
わたしは都内に住んでいるのですが、一度も土の上を歩かずに1日を過ごすことが少なくありません。
外を歩いていたとしても、ずっとアスファルトなどの舗装路の上ってことがほとんどです。
周りを見渡してみても土といっても公園のグラウンドくらいで、どこにも土を見つけることができません。
でも工事現場なんかをみると、アスファルトのすぐ下は土で「アスファルトはこんなに薄っぺらいのか」と思ってしまうほどです。
表面上は人工物に覆われていて気づきにくいですが、わたしたちは土の上で生活しています。
そしてわたし達は土からできた野菜を食べ、土から生える草を食べた家畜の肉を食べて生きています。
土がなければわたし達の生活はすべて破綻してしまいます。
土は水と同じくらい重要なものなんですが、土はどうしても空気と同じくらいの存在感です。
わたしたちの足元には土が常にあるのに、あまりその存在にスポットライトを当てることはなかなかありませんでした。
そんな縁の下の力持ちに詳しい解説を与える、地味ながらも土に対する愛が感じられる著書でした。
サムネイルはAmazonページより使用しました。