スタンダードな60%キーボードを自作してみよう!
dz60:コンパクトなキーボード
とてもメジャーな自作キーボードとしてdz60というキーボードがあります。このキーボードはキーレイアウトもある程度カスタマイズでき、自作というだけあってキースイッチもいろいろ選べるので最初の自作キーボードとして最適です。
はんだ付けが必要ですが、その難易度も高くはありませんので自作キーボードに興味がある人は入門としてトライしてみるのはいかがでしょうか?今回はハードの組み立て方法について紹介していきます。ざっくりとした流れはこの様になっています。
- キーレイアウトを考える
- 部品と道具をそろえる
- プレートにスイッチの配置
- スタビライザーの設置
- PCB(基盤)へのはんだ付け
- キーキャップ取り付け
- ファームウェアの書き込み(この記事で解説)
工程7のファームウェアの書き込みは解説が長いので別の記事にしています。それでは早速、dz60を組み立てて行きましょう!
キーレイアウトを考えよう!(1/7)
dz60は先に書いたようにキーレイアウトを一部自由に設定することができます。私は今回のキーレイアウトをHappy Hacking Keyboard(HHKB)に矢印キーを追加したような配置にしようと思いました。
HHKBとはこういった特殊なキーレイアウトをしています。特に最上段が特殊ですよね。本来ならバックスペースがある場所にバックスラッシュ(\)とバッククオート(`)になっています。
そのかわりバックスペースがエンターキーの真上に来ています。他にも最下段の装飾キーの大きさも違います。普通ならあるはずのカーソルキーがなかったり、コントロールキーが無かったりします。
dz60ではHHKBと同じキーレイアウトを作ることもできますが、今回は最上段のキーレイアウトはHHKBと同じで、最下段にカーソルキーを追加したようなキーレイアウトにしようと思いました。
自作キーボードに必要な部品と道具(2/7)
まずは自作キーボードに必要な部品をそろえていきます。dz60を組み立てるのに必要な部品として下記のものがあります。
- キースイッチ
- キーキャップ
- キープレート
- キーボードケース
- PCB(dz60)
- スタビライザー
それぞれについて解説していきますね。まず最初に決めなければいけないのがキースイッチ。これがキーボードの操作感覚を決定します。タクタイル?クリッキー?それともリニア?悩みどころですが、選ぶのも楽しいところです。なお写真下のリンクから私が購入したものと同じ商品にアクセスできます。
私はキー押下が軽くて、アクチュエーションポイント(キーがONになるポイント)が浅いKailh Silverを選びました。
KAILH SPEED SWITCHES (10 switches)kbdfans.cn
dz60には最低でもキースイッチが60個は必要ですが、自分が作ろうとしているキーレイアウトを考えてちょっと多めに買っておくのもありでしょう。私は70個のキースイッチを購入しました。
次にキーボードの見た目を決めるキーキャップです。
[IN STOCK] R1 XDA Dye-sub 60% 65% Keycapskbdfans.cn
これもキーレイアウトによって選び方が違います。特にシフトキーの大きさには注意です。普通は2.25Uのキーサイズのものを選べがOKなのですが、今回のキーレイアウトは最下段に矢印キーを組み込むため、2Uのシフトキーがあるキーキャップセットを選びました。奇しくもHHKBそっくりなキーキャップセットがあったので、そのキーキャップセットを購入しました。なおこのキーキャップセットは優秀でこれさえ買えば、ほとんどあらゆるキーレイアウトに対応できてしまいます。
キープレートはキースイッチを固定するための金属製のプレートです。
DZ60 CNC (ALUMINUM/STEEL/BRASS) PLATEkbdfans.cn
プレートがなくてもキーボードはできるのですが、キースイッチがキレイに並ばなかったり、スイッチの端子に負荷がかかるので買っておいたほうが良いでしょう。シフトキーの大きさによって種類が異なるので2Uタイプなのか2.25Uタイプなのかを気をつけましょう。
キーキャップと同じくらい見た目に影響を及ぼすのがキーボードケースです。
アルミニウムの削り出しタイプや木製のタイプがあったりします。特にこだわりがないのであればプラスチック製のものでも十分です。
PCBはキーボードの心臓部というべき部品です。この基盤の中にキーボードを制御するマイコンや配線が組み込まれています。
DZ60 REV 3.0 60% MECHANICAL KEYBOARD PCBkbdfans.cn
今回使用するPCBがdz60です。私が購入したKBDfansというサイトでは、PCBを買うときのオプション品としてキースイッチやスタビライザーがついてきます。
スタビライザーはスペースキーなどの大きなキーに使う部品です。
大きなキーの端を押すとキーが傾くだけでキースイッチがONにならないことがあります。PCBのオプションについているスタビライザーを使用するのが一番ですが、オプションになければ自分で購入します。PCBマウントのスタビライザーを購入しましょう。スペースキー用の6.25Uとエンターキー用の2.25U、シフトキー用の2Uのスタビライザーを購入しましょう。正直2Uのキーならばスタビライザーは不要と思っています。私は2Uサイズのキーにはスタビライザを使用していません。
私はこれらの部品をKBDfansで購入しました。合計で1万5千円程度でした。驚きなのがその配送の早さ。KBDfansは中国の会社なのですが4月22日の夜に注文して27日に届きました。個人輸入にしては驚くべきスピードですね。
次にキーボードの組み立てに必要な道具を紹介していきます。
絶対に必要なのがはんだごて。これがなければ始まりません。dz60では高度なはんだ付け技術を求められないので安めのキットでも十分です。私もこれくらいの値段のはんだごてセットでdz60を自作できました。
dz60レベルであればはんだごてがあれば組み立てはできるのですが、他にあれば便利なのがハンダ吸い取り線やピンセット、デスクライトなどです。簡単とはいえ、はんだ付けは細かい作業なので手元を明るく照らしてくれるライトがあるとすごくやりやすいですよ。
上記のはんだごてセットにはハンダ吸い取り線やピンセット、簡単なはんだごて置きがついてきますので、たくさんキーボードを作らないのであれば、これだけ買えば十分です。また、キースイッチの引き抜き器具を買っておくとキースイッチの交換が楽になります。
キーボードの部品と組み立て道具をそろえたらいよいよキーボードの組み立てに入ります!
プレートにキースイッチを配置しよう(3/7)
キーボードのパーツが届いたらまずはプレートにキースイッチを配置していきます。プレートにキースイッチをはめるのは結構力がいるので、プレートの側面で爪を削らないように気をつけましょう。
まずは四隅にキースイッチをはめてみてPCBの上下左右の確認を行います。
dz60は左上にUSBケーブルのソケットがあります。また、表面は真っ黒です。
一方の裏面は金色のはんだづけする場所やダイオードがいろいろついていてごちゃごちゃしているので初めて見てもわかると思います。
四隅にキースイッチをはめて大まかなあたりを付けます。特に右下隅のプレートは大きく空いているので、位置決めを慎重に行いましょう。四隅のキースイッチの位置が決まったら残りのキースイッチをプレートに配置していきます。
この時シフトキーやエンターキーなどの大きいサイズのキーのスイッチはまだはめ込まなないほうが良いです。なぜならキーの大きさによって微妙に配置する場所が変わるからです。
こういったキーのスイッチの位置を決めるときは、キーキャップをスイッチにはめて位置決めをします。キーが混み合う最下段はスイッチの位置決めが大変なので慎重に行いましょう。
全部のキースイッチの配置が終わったらキーの端子の向きが間違っていないか確認しましょう。
たとえキーが上下反対についていたらPCBにハマらないのでそこで気づきますが、気づきにくいのでプレートの裏から見てキーの足の向きを確認しておきましょう。全部のキースイッチを配置たらそれだけでなんか達成感を感じます。
キーによってスイッチを変えるのも一興です。私はESCキーと左右のALTキー、矢印キーはSilver軸とは別のスイッチにしました。スイッチを変えることによって誤タイプが減っていい感じです。
PCBにスタビライザーを設置しよう(4/7)
はんだ付けの前にスタビライザーを設置します。はんだ付けした後にスタビライザーを取り付けたり、交換することは出来ないのでここは気の使い所です。
スタビライザーはいくつか種類がありますが、dz60にはプレートマウントのスタビライザーを使います。キースイッチのときと同じく、スタビライザー固定用の穴も複数あるので固定場所はキーキャップと合わせて決めるのがおすすめです。
スタビライザーの向きは金属棒がUSBソケットの方を向くのが正解です。スタビライザーを設置したらプレートを合わせてみてキーキャップを設置してスムーズに動作するかを確認します。スタビライザーは金属棒とスタビライザーの固定用のプラスチックが干渉して動作が渋いときがあります。
先に書いたようにスイッチのはんだ付けをしてしまうとスタビライザーの交換は出来ません。ここで実際の使用感を確かめて問題がないことを確認しましょう。もし金属棒とプラスチックが干渉していたら金属棒をヤスリ掛けして少し短くしたり、グリスを塗ったりして対策をしましょう。必ずキースイッチとキーキャップを付けてスタビライザーの動作を確認しておきましょう。
PCBにはんだ付けしよう(5/7)
PCBにスタビライザーを設置して、プレートにスイッチを全てはめ込んだらPCBとプレートを重ね合わせます。全てのスイッチがPCBと重なり合うのは結構位置取りがシビアなので隅っこから少しずつ重ねていきます。
全てのスイッチが正しい位置にセットされたら、PCBを裏から見たときにキースイッチの白い足が見えると思います。かなりかっちりとハマるので、簡単にプレートとPCBが分離することはまずないでしょう。
はんだ付けの前にスイッチ端子がきちんとPCBから飛び出ているかを確認します。
PCBとプレートを重ねるときに無理矢理に重ねようとするとスイッチ端子が折れてしまうことがあります。そうなってしまうとスイッチ端子をはんだ付けすることができません。
スイッチ端子が折れていても手で真っ直ぐに直せば、再び利用できます。
全てのキースイッチの端子がPCBにから飛び出ていることが確認できたらいよいよはんだ付けです。PCBから飛び出ている端子2つに対してはんだ付けを行っていきます。やけどに気をつけながらはんだ付けしましょう。はんだ付けするのは中学校の頃以来でしたが、割とすぐに慣れました。
これを全てのキーに対して行います。スイッチひとつに対して端子は2つ出ているので結構な作業ですね。dz60に関してははんだ付けはスイッチに対してだけなのでコツコツ行いましょう。
全てのキーのはんだ付けが終わったら動作確認をします。キーレイアウトによっては認識しないキーもあるかもしれません。特に特殊な今回のように特殊なキーレイアウトではシフトキーが反応しなかったり、別のキーとして認識されたりします。
最低限アルファベットと数字、エンターキーなどは動作するはずなので最低限確認しておきましょう。動作確認にはこのサイトを使います。
もし動作しないキーがあれば、はんだ付けが正しく行われているかどうかを確認します。しっかりはんだが付いているようで実は浮いていたり、はんだ付けを忘れていたりしないかを確認しましょう。スイッチが最初から壊れていたということは、まず無いので、はんだ付けの失敗を疑ったほうが良いでしょう。
動作の確認が済んだら完成はいよいよ目の前です!
キーキャップを取り付けよう!(6/7)
PCBの動作確認ができたらキーケースに収めます。ケースには6つのネジで固定します。このネジ穴がすごく小さくてネジ止めしにくいのでピンセットがあれば非常に便利です。
6箇所をネジ止めしたらキーキャップの取り付けを行います。特に難しいことはありません。徐々に出来上がっていくキーボードにニヤニヤしてしまいます。
ここまでの完成はハードでの部分です。先にも書きましたがキーレイアウトによっては動作しないキーがあったりするので次回の記事でソフト面での完成を目指します。
スタビライザーは特に気をつけよう!
dz60の組立自体はそこまで難しいポイントはありませんでした。ただ1つかなり躓いたのがスタビライザーでした。動作をよく確認しなかったので、気づくのがキーキャップを組み立ててからだったのですが、エンターキーの動きがかなり渋かったのです。
どうもスタビライザー内部で何かが干渉しており、エンターキーがなかなか戻らなかったのです。今からスタビライザーを交換するためには全部のキースイッチのはんだを取り除いて分解する必要があります。「これは詰んだのでは…?」と思っていたのですが、奇跡的にエンターキーの周りはプレートが大きくえぐれていて、なんとかスタビライザーの交換ができました。
スタビライザーを使うキーはしっかりと動作確認をはんだ付けの前に確認しておきましょう。そうしないとスペースキーが動作しなかったり、押しっぱなしになったりととても使いにくいキーボードになってしまいますので…
次回の記事ではdz60にファームウェアを書き込んだり、キーレイアウトをカスタマイズする方法を紹介していきます。
この記事はdz60で作成しました。