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書評「ザ・シークレット」感想:読むに耐えないカルト本

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胡散臭い成功談を集めました。

ザ・シークレット

一度は聞いたことがあるかもしれない「引き寄せの法則」に関する世界的ベストセラー本。ちなみに普段なら絶対に買わない。でもアマゾンで絶賛される一方でこき下ろす人も多いこの本に好奇心が勝って、つい購入してしまった。結果としては、今年の読書経験で一番の大失敗。

 

「引き寄せの法則」は聞いたことがあったのでなんとなく内容は知っていたけど、その原典(?)がここまで胡散臭さプンプンの著書だとは知らなかった。書かれているのは「引き寄せの法則」によってお金とお金(誤字ではない)を手に入れた人たちの成功談に次ぐ成功談。しかも太字や大文字が多用されていて読みにくいったらない。

 

成功談のあとには必ずカルトな解説が入ります。「あなたの思考は波動となって…」「思考は磁石のように振る舞い…」「宇宙はあなたのシグナルに反応して…」「あなたは電波塔なのです…」とかこんな文書が書かれていて、胡散臭さに鼻をつまみたくなるようなトンデモ本。何度読むのをやめようとしたか。

 

せめてエセ科学的な解説はやめて「そういう心持ちが大事なんです。」くらいで止めておいてくれてたら、多少はましになったはず。無理にシグナルとか電波塔とか言っちゃうから一気に胡散臭くなるんですよね。下手にしょうもないエセ科学で裏付けをつけようとして逆効果になっちゃってます。

 

一度読み始めた本は途中で投げ出さない。をポリシーとする私にとって、読み終わった感覚は「やっと終わった…」っていう徒労にも似た、無かったことにしたいほどの実りのない読書でした。

 

引き寄せの法則

「あなたはあなたの思考が現実となったものです」。この考えは悪くない。むしろそう思ってる。自分がこうなりたいと思ってそうなれたのなら、喜ばしいことです。

 

この本で致命的に間違っている(と思っている)のが「思考が宇宙に発信されて、宇宙がそうなるように自分の環境を整えてくれるので願い・信じ・受け取るだけでいい。あとは願いがかなったかのように行動しなさい」と主張しているところ。

 

確かになりたい自分像を固めて自分はそうなるんだって願い、信じることは大事。例えば大学受験でただ合格するためだけに受験勉強するのと、その大学でどんなことを学んでどんな人間になりたいのかっていうイメージを描いて受験勉強するのとでは後者のほうがより勉強に身が入るはず。

 

でもこの本によればただ「願い・信じ・受け取る」ことが何より大事で、自分がそうなったように行動せよと言う。だったら「東大に入りたい!」って強く願い、信じて、東大生になったように行動すれば勉強しなくても誰だって東大に入れるんですかね?

 

石の人の話

この本で一番わけがわからんのが感謝の石の話。感謝は大事ですよっていうのを伝えたいんだろうけど…そのエピソードがこれ。

 

日頃の感謝する態度を忘れないように道端の石ころを1つ拾ってポケットに入れて、石ころを触ると何かに感謝するように心掛けた人がいました。そこにある人がやって尋ねます。

 

ある人「なんで小石をポケットに入れているんだい?」

石の人「石に触れたときに感謝する態度を思い出すためだよ」

ある人「いいかんがえだなぁ~」

 

~後日~

ある人「息子が大変な病気だ!あの感謝の石を送ってくれ!」

石の人「河原から適当な石を拾ってきたよ。あげるね」

 

~また後日~

ある人「石のおかげで息子の病気が治った!ありがとう!!」

石の人「よかったね」

 

~またさらに後日~

ある人「感謝の石を1個10ドルで売ったら1000個売れたよ!売上は慈善事業に使うよ!」

地の文「そう言う訳で感謝する態度は大事なのです」←????!?!!!???!?!

 

えっ?!一体どうゆうわけなんだろう?意味がわからないよ。石の人がそういうビジネスを始めたのならまだわからなくもないけど、別の人でしょ?感謝の気持ちと持つとお金が手に入るよ!とでも言いたいのかな?

 

そもそも拾ったただの石を10ドルで売るってのは犯罪的だし、1000個(約120万円分)も売り歩くとか…もとは人のアイデアだし、これは詐欺なのでは?

 

これが成功者の体験談として紹介されているあたり、著者の道徳心を疑いたくなります。

 

読者を馬鹿にしすぎ

引き寄せの法則の典型例ってこんなもんです。「新しい服を着て『この服を汚したくない!』って思うと、逆に宇宙に『この服を汚したい!』って電波を発信していることになって、結果的に服を汚してしまいますよ。」って話。この手の話はこの本にたくさん(本当にたくさん)出てきます。「駐車スペースがあってほしい!」とか「遅刻したくない!」とか。

 

この本に頻発するこの手の話の問題点は3つ。

1つ、問題が軽すぎってこと。

2つ、願いと結果の関係が曖昧すぎってこと。

3つ、読者を軽視しすぎってこと。

 

1つ目について。その服が1000万円するんならともかく、悩んでいる人が本当に解決したい・なんとかしたい問題って、「服を汚したくない」とか「駐車スペースが空いていてほしい」こんなに軽いものじゃないですよね。

 

2つ目について。「服を汚したくない!」って思うと服が汚れるのなら「服を汚そう!」って思えば服は汚れないわけ?でもそれだとお得意の「引き寄せの法則」で服汚れちゃうよね?じゃあ「服をキレイに保ちたい!」って思えばいいの?それって「服を汚したくない」ってのと同義だよね?どういう因果関係で物事を引き寄せようとしているのかな?

 

3つ目について。もし、引き寄せの法則が正しければ、ひどい事件や事故にあった人は著者からなんて言われるんでしょうね?「あなたがそう願ったから起こったんですよ。ほら、私の本を読んでみてください」とでも言うんでしょうか?

 

こういう例え話が延々と繰り返されるので、著者は読者のことを、抱えている問題は軽く、想像力がない人たちだと思っているんでしょう。

 

願うだけでボロ儲け

およそ3000文字に渡ってこの本をこき下ろしてきましが、読んだ人の中では大絶賛している人もいるのは事実。アマゾンのレビューでは評価が二分しているところに好奇心をそそられたのは確かでした。

 

ある人は絶賛し、またある人はこき下ろす。私は後者のようでした。電子書籍で買ってしまったので再生紙として捨てることもできないという時間とお金の無駄でした。物理的な場所を取らないだけ、マシだと考えます。

 

個人の感性はそれぞれなのですが、この本のどこにどんなふうに感動して星5つをつける事ができるのか理解できません。確かにこの本を読んでいる間「おっ、そうかもな…」って思うところはあったんです。でも次のページに「あなたの思考が波動となって宇宙へと発信され…」みたいなこと書かれちゃうともうダメ。そんな証拠も根拠のないことを延々語られても失笑しかでないよ?

 

この本の成功体験の裏付けとして書かれていることは、何やら怪しい団体や組織の代表の話。偉い人が体験したからっていうハロー効果を狙っているんでしょうか?

 

因果があやふやな他人の成功談の寄せ集せを読むなんて時間とお金の浪費ってもんです。どうしても気になるのなWikipediaを読んでおきましょう。それで十分。無料ですし。リンクを張っておきますよ。また、好意的な観点から本書をまとめているページも見つけました。それでも私の評価は覆りませんけど。

 

最初にも書きましたけど、この本に描かれている典型的な成功例が「願っているだけで大金持ちになった!」って言うものなんですよね。確かに全世界で売れているんだから、願っているだけで大金持ちになれるでしょう。この本の著者は。