よく言えばコンパクト。悪く言えば尻切れトンボ。
あなたの人生の物語
2017年に映画になってたこの小説。原作は短編小説。突如、地球に現れたばかうけ宇宙船に乗り込んでみると、なにやら言語っぽいサークルを話す2つの7脚の物体が。言語学者のルイズ・バンクス女史はその宇宙人の言語を解析している内に自身の未来の物語、まだ産んでいない我が娘とその最期を知ることになる…というSF小説。
映画は見ていないけど、予告番やWikipediaを見てみると結構な味付けが加わっているみたい。原作には中国軍も出てこないし、宇宙人が「武器を持ってきたよ」って解釈できるようなシーンも出てこない。原作を読んでみてちょっと納得。この物語、設定がよく練り込まれている割にイマイチ盛り上がりに欠けるし、結末もバッサリ、ぶつ切り。
きっと科学的な造詣が深い人なら、もうちょっと楽しめるかもしれないけれど、星を継ぐ人みたいな謎が謎を呼ぶ様な展開を期待する人からしたら超薄味という評価をくださざるをえない…
実は短編集
タイトルに書いたように「全編共通」ってのは意味があります。実はこのメッセージは短編小説なんです。そして「あなたの人生の物語」は短編集です。この小説を買えば8作のSF小説を楽しめます。
- バビロンの塔
- 理解
- ゼロで割る
- あなたの人生の物語
- 七十二文字
- 人類科学の進化
- 地獄とは神の不在なり
- 顔の美醜について
それぞれが結構なボリュームがあります。「人類科学の進化」以外は。そして全てが「えぇ…これで終わり?」みたいな終わり方をします。
私のおすすめは「バビロンの塔」と「人類科学の進化」と「地獄とは神の不在なり」ですね。「バビロンの塔」天まで届く塔を建設する鉱夫の物語。天の底まで届いたその日、底を突き抜けたその先にあったものとは…
「人類科学の進化」人類が作った技術が人類を超えた日。それは恐怖なのか?いいえ、元は人間が作ったものですから…
「地獄とは神の不在なり」定期的に神が降臨し、奇跡と殺人を起こしている世界。神に妻子を殺された男は神とどう対峙すのか…
これらが好きな理由は比較的オチがピシッとしているからです。その他はほんとに尻切れトンボだと感じました。「えっ?これで終わり?!」みたいな。特に「七十二文字」は途中の盛り上がりとオチの落差すごい。
個人的に面白い発想だなって思ったのが「顔の美醜について」。イケメンとブサメン(女性も)の区別ができなくなるような治療って受けるべき?受けないべき?って言う意見を色んな人からアンケートするって言うお話。ただ、それだけ。
邦題問題
実は映画「メッセージ」って邦題なんです。原題は”ARRIVAL”(到着)。確かに宇宙船が地球に到着し、ルイズ女史は悲劇的な未来を受け入れます。変えられない未来が来たぞって。それが悲劇的であれ、見えてしまったものはもう変えられない。それが到着してしまったから。
宇宙船がどうして未来を見ることが出来たのかとか小説では詳しく解説されているのでそういった所に注目してみると、もうちょっと楽しむことが出来るかもしれません。他にも「あなたの人生の物語」の「あなた」って誰?ルイズ女史?ルイズ女史の娘?って考えてみると面白いかもしれませんね。
ただなぁ…オチがなぁ…全部弱いんだよなぁ…