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書評「日本の分断~切り離される非大卒若者たち~」感想。”格差”ではなく”分断”

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優しいシェフの残酷な料理

日本の分断〜切り離される非大卒若者(レッグス)たち〜

第一線で活躍する社会学者の最新の社会調査のレポート。最高の食材で作られる一流シェフの料理のようです。

 

「格差社会を是正します」みたいな政治家トーク聞きますよね。「誰々内閣になってから日本は貧しい者は更に貧しく、富める者は更に富んでいくんです!」みたいな。この本を読んでみてそういう意見を聞くと「この人よっぽど現状を直視できてないんだろうなぁ…大丈夫かよ?」って思っちゃいます。

 

薄々「格差というよりギャップだろ…」って思っていた私の胸にストンと落ちていったこの本。「日本は性別と年齢と学歴による分断社会がすでに構築済み」というこの本の主張を理解して膝を打つと共に、日本の分断ぶりが浮き彫りになったようです。

 

そう、格差ではなく「分断」です。お互いの姿は見えているけれど、ほんとうの意味でお互いに交わりが少ない。まるで同じ言葉を話す別の国の人のような感覚。もっと言えばガラス張りの向こうから対話しているようなもの。同じ場所にいながらそんな分断がもうすでに出来上がっている。そうこの本は主張します。

 

分断の打ち合わけと不平等

分断はどのようにして生まれるのか。それは年齢・性別・そして学歴によって。どうしてこれらの分断にしているのかと言うと、生まれてから変更が効かないから。年齢と性別はわかりますが、学歴はどうにでもなるんじゃない?って思いますけど、高卒で社会人になってから大学卒になるのって、あまり現実的じゃないですよね。

 

だから年齢・性別・学歴によって日本人を大分しています。年齢は日本を支える現役世代、つまり20歳から60歳までと想定するとこんなふうに日本人を分類することができます。

  1. 40〜60歳・大学卒・男性
  2. 40〜60歳・非大学卒・男性
  3. 20〜40歳・大学卒・男性
  4. 20〜40歳・非大学卒・男性
  5. 40〜60歳・大学卒・女性
  6. 40〜60歳・非大学卒・女性
  7. 20〜40歳・大学卒・女性
  8. 20〜40歳・非大学卒・女性

日本を支える現役世代はこの8グループに分類して2015年に実施された社会調査の結果と照らし合わせてみると明確な差を見つけることができ、その差はたとえ同じ年齢・性別であったとしても学歴によって大きく左右されています。

 

例えば一人勝ちの様相を呈しているのが40〜60歳の大学卒の男性。その逆が20〜40歳の非大学卒の男性。年収・政治への関与・文化的な生活習慣について明確な差が見られ、一方的に利益を受けているのが前者・全く利益を得られていないのが後者ってわけです。

 

同窓会で感じた”分断”

私個人の話で恐縮ですが先日地元で同窓会がありました。私は経済的理由により幸運にも修士課程を終了することができ、東京の会社に勤めています。同窓会での他のメンバーは高卒で地元(地方)の会社に勤務していました。

 

「お〜久しぶり〜!今何しよん?」なんて話題もソコソコに出てくるのは会社の話と子供の話。彼らは皆ブルーカラーであり会話に花が咲きます。一方の私はホワイトカラーの端くれ。ブルーカラーたる彼らに仕事を振る身です。「お前はどんな仕事しとん?」って聞かれたところで「君らの上流の仕事だよ」と言ったところでピンときてくれるわけもなく「班長?工場長?」みたいな理解が関の山。

 

一方私には彼女もいないので子供の話では完全に蚊帳の外。地元に残った同期たちはすでに2〜3人目の子供を養っています。バツイチで今の嫁さんと子供を持っているのもいました。そういった彼らの生活を想像することは難しく、リアルな共感ってのは難しく思いました。

 

同窓会自体は楽しく、まるで酒が飲めるようになった中学生の飲み会のようでしたが、この時感じた空気感の差。まるで膜の向こうから話しているような感覚はどうしても拭うことができませんでした。

 

学卒は学卒に。高卒は高卒に。

「大学全入時代が来るじゃないか。高卒って身分はいずれなくなるんじゃないか?」って意見もあるとは思います。が、そうはならないだろうっていうのがこの本の主張です。これには先程の同窓会でも感じることができました。

 

言い切ってしまうことに、後ろめたさを感じられずにいないのですが、「高卒には学卒の専門性を深める意義を理解出来ないし、学卒には高卒の身軽さを理解できない」んです。

 

同窓会の一幕です。「大学院まで行くメリットって何なん?」別に嫌味があって言っている訳ではないのです。本当に想像がつかないから、そう聞くしか無いんです。逆に私が「高卒で就職するってどういう仕事するの?」って聞くことも同じです。結局お互いの学歴のギャップを超えた生活や仕事を想像できないんですよね。

 

高卒の親が大学・大学院まで行く意義を理解できるのか。その逆の場合、親はOKと言えるのか甚だ疑問ですよね。だから高卒の親を持つ子供は最終学歴が高卒になりがちですし、学卒の親を持つ子供の最終学歴は学卒になりがちです。結婚相手も高卒は高卒同士、学卒は学卒同士となる割合が高く、学歴は遺伝していきます。

 

つまり、分断は世代を超えて引き継がれていくわけです。

 

子育て支援という罠

最初に書きましたけど、耳あたりの良い政策として子育て支援ってありますよね。これって、今子供を持つ高卒男性の20〜40歳から搾取するための法案だったりするわけです。

 

タバコ・車離れが叫ばれるですが、高卒男性の20〜40歳にはそれが当てはまりません。マイルドヤンキーと言われている彼らの喫煙率はそこまで低くありません。タバコ税率引き上げ分の多くは高卒男性の20〜40歳が担うことになるのです。

 

彼らが負担した税金でもって大学全入の費用に当てたり、大学無償化の財源にするわけですから、高速の彼らにとってのメリットはほとんど無いわけです。でも税金の負担者たる彼らに知るすべはなく(政治関与率全グループ最下位位)、搾取されるだけの存在になってしまっています。

 

この本を読んでみて

大々的に「年収と学歴は明確に関係しています。学歴により生涯年収は明らかに変動します」って言うの…なんか気が引けません?でも誰しもがそう思う節はあるし、そうなんだろうなぁ…って感じるところはあると思うんです。

 

まるで舞浜の某テーマパークで「あの中にはなぁ!バイトのねーちゃんが汗かきながら仕事してんだよぉ!」って大声で叫ぶような後ろめたさを感じます。でも筆者は、そういうタブーに触れる思いがあると前置きした上で、学歴による分断について鋭く切り込んでいます。

 

別に高卒の人たちが全員、学卒になればいいっていう話ではないんです。高卒には高卒の良さはあるわけです。大事なのは8グループの日本人全員が活躍できるっていう社会が理想なわけです。

 

著者は非大学卒の若者のことをレッグスと呼んでいます。蔑称ではなく、彼らこそが出生率も高く、次世代の日本を支える脚なのだと言うことです。8グループの全員が活躍できない状態の日本は回らなくなる。

 

残酷な現状をそのまま提示し、そしてあるべき優しい世界を提示するすこの本。優しいシェフの残酷な料理のようです。必読です。