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書評「大人の恐竜図鑑」恐竜の詳細な生態と怒れる筆者の毒舌

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怒れる筆者の舌鋒にタジタジ。

大人の恐竜図鑑

男子小学生が一度は好きになるのが恐竜。奇しくも私が小学生の時に初代のジュラシック・パークが公開されて恐竜の怖さ、かっこよさに心底惚れてしまい飛び出す仕掛け絵本の恐竜図鑑なんかを買ってもらいました。

 

この本、大人の恐竜図鑑はそんな恐竜大好きな子供だった人が大人になって読むといろんな気づきをもたらしてくれます。正しいと思われていたけど間違っていたこと、間違っていると思われているけど実は正しかったこと、やっぱりまだわからないこと、なんかがたくさん出てきます。

 

ティラノサウルスは実は走れなかったとかもこの本の議題にも上がってきます。個人的に「マジで…?あぁでもそれもそうか」って思ったのが肉食恐竜の顔。特に口周りのこと。映画の肉食恐竜、特にティラノサウルスとかは歯がむき出しでいかにも「俺、肉食いまっせ!」ですけど、実はあれ復元が間違っているとのこと。その理由もこの本の中で納得の行く説明がなされています。

 

どうして恐竜が絶滅してしまったのか、今の人類につながる哺乳類はどうして生き延びたのか、なども詳しく説明されているのでぜひ手にとって見てはいかがでしょうか。

 

豊富な恐竜の解説

この本のすごいな…!って思うところがやっぱり恐竜の細かい生態の解説です。例えばアロサウルスとティラノサウルスの狩りの仕方の違いなんかが解説されています。アロサウルスとティラノサウルスは生きた時代は違いますが、両者とも肉食恐竜です。

 

サバンナで狩りをするライオンなんかは獲物を噛みつきで仕留めますが、最終的に獲物を仕留めるのは窒息で絞め殺すわけです。一方、過去に生きていたスミロドン(サーベルタイガー)は鋭い牙で獲物に噛みつき皮膚を切り裂くことで大量の出血を与え、失血死で獲物を仕留めるわけです。そんなふうに恐竜も獲物の仕留め方が違うんです。

 

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Image:アロサウルス - Wikipedia

アロサウルスはスミロドンのような狩りの方法をしていたと言われています。ただ、その方法がえげつない。鋭い牙が並んだ口と90度近く開く顎で獲物に食らいつきます。そのまま顎を閉じるのではなく、食らいついたまま首と背中の力を使って一気に後ろに引いて獲物を切り裂くわけです。獲物は大量の出血で失血死してしまうわけです。

 

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Image:Tyrannosaurus - Wikipedia

一方のティラノサウルスはパワー系です。鋭い牙と強力な顎の力でバクっと食いついて獲物の一部を食いちぎるわけです(現にそういった化石も見つかっているそうです)。こんなでっかい牙でかじられるなんて人間だとひとたまりもないですよね。サクッと絶命しちゃいますね。ちなみにティラノサウルス成長期は1日に2キロ以上体重が増えていたそうです。

 

こんなふうにいろんな恐竜の生態をイラスト付きで解説されているのも、この本の良いところです。

 

怒れる筆者

この本の面白いところが、ちょいちょい著者が毒づいているところです。例えばティラノサウルスが死体しか食べないスカベンジャーだったという主張に対して、

死体しか食べませんとか、わがままを言うからいかんのだ。狩りをすれば死なずにすむ。ティラノサウルスだって同じである。
from:筑摩書房 大人の恐竜図鑑 / 北村 雄一 著

なんてところから始まり、考古学者にも噛み付いています。

19世紀のアメリカ人古生物学者レイディー博士である。この人はどしどし新種を報告する人で、そしてしばしば仕事が雑だった。
from:筑摩書房 大人の恐竜図鑑 / 北村 雄一 著

こういう歯に衣着せぬ物言いがなかなかに気持ちいい。トリケラトプスとトロサウルが実は同一種でトリケラトプスという種がなくなってしまうのでは?という疑問にもズバズバ切り込んでいます。

 

切り込みが行き過ぎて読者なんかにも牙が及んでしまっているのはご愛嬌。

 

この本を読んでみて

小学生がこの本を読むのは結構難しい。でも大人になってから読むと発見とリマインドの連続で面白いんですよね。ほんの少し前までスッキリ忘れていたのに名前や復元図をみたら「うわ、この恐竜仕掛け絵本にいたわ!」なんて思い出したりします。

 

そしてそんな子供の頃から20年以上たった今。変わったこともたくさんあります。多くは新学説や新しい化石の発見による変化なんかです。でもよくわかっていないこともたくさんあるようです。

 

一つが恐竜の皮膚の色。皮膚は化石に残らないのでどうしても想像の域を出ないそうです。他にも恐竜には羽毛が付いていたのかなんかも未だ謎です。いくらかは進捗はあったようですが、「これだ!」ってのはまだないようです。

 

この本を読んでいる間はまるで小学生の頃に夢中になって恐竜図鑑を読み漁ったような感覚でした。子供の頃の知的好奇心が蘇るこんな本。ぜひ恐竜好きだった元キッズには手にとって欲しいものです。