NENZOP

言葉にしないと伝わらない。文字にしないと残らない。

先天的に耳が聞こえない人と一緒に仕事をして思ったこと。

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違いは ほとんど 何もない。

春になると思い出す

春って人事異動の時期。何年か前の4月に部署異動により、ある人がチームに入ってくることになった。

 

その人はどうやら先天的に聴覚障害を持っているらしく、耳がほとんど聞こえないらしい。最初、正直に言うと「おい、まじかよ…」って思った。当時うちのチームは、とあるwebサイトを作っていて僕はバックエンドのシステムを担当していた。

 

サイトの利用者が増えてきて、フロント・バックエンドともに大規模なメンテが必要だった時期で、開発メンバが足りなかった。で、その人がうちのチームに入ることになったわけだ。

 

その人はどちらかと言えばフロントエンドの担当をすることになったんだけど、率直に言ってコミュニケーションが出来るのかどうか不安だった。コミュニケーションって話す・聞くがあって初めて成り立つものなのに、耳がほとんど聞こえない人と一緒に仕事が出来るのかな…って純粋に不安だった。

 

耳が聞こえない?ほんとに?

ついに異動の日がやってきた。その人とは異動の前からPCの準備とかでメールで何度かやり取りしていた。その時に思ったのが「あれ?全然普通かも?」ってこと。もちろんメールのやり取りだから聴覚の出番は無いんだけど、全然普通にコミュニケーション出来た。

 

異動の日、上長の紹介のもと顔合わせがあった。確かに喋り方はちょっと変だった。でも何を言っているのか普通にわかるし、こちらの会話もわかってるみたいだった。

 

顔合わせでは「メールの〇〇(僕の名前)さんですね。よろしくおねがいします」みたいな事を話した事を覚えてる。耳が聞こえない人と仕事をするなんて初めてだったし、なんなら、筆談用にちっちゃいホワイトボードも机の中に用意していた。

 

でもホワイトボードの出番なんてなかった。僕が喋ってること全部わかってるみたいだった。しばらく一緒に仕事して、耳が聞こえないって、ほんとに?って思う出来事があった。

 

十分伝わりますから

仕事の引き継ぎが終わって、数日後、社内の施設を案内する機会を任された。仕様書はこのキャビネット、ケーブル類はこの箱にあるよ。みたいな場所を案内していた。

 

当時、僕は一昔前のトレンディドラマの様な大げさなボディ・ランゲージを使って説明していた。「仕様書(ページをめくる仕草をして)はここ(指差す)です」とか「電源ケーブル(ケーブルをたたむ仕草をしながら)はここ(指差す)にあります」みたいな。

 

しばらく案内していたら、その人はちょっと笑いならがら「〇〇(僕の名前)さん、そこまでしなくても、十分伝わってますよ」って言った。ギクッってなった。そして自分の浅ましさを恥ずかしくも思った。

 

別にその人のことを見くびっていたわけでも、特別扱いしようみたいな気持ちはなかったけど、その人は全部見透かしてたみたい。それなのに嫌な顔せず、笑って指摘してくれた。子供のいたずらが親に見つかったのに、怒られなかった。そんなバツの悪さを感じた。

 

「十分伝わってますよ」その言葉の通りだった。電話は無理でも、その場に居て会話をするくらいだったら聴覚障害をもってるって事を忘れるくらい自然だった。プロジェクトメンバの打ち合わせも初回こそ緊張した空気があったものの、2回目からはいつもどおりだった。

 

こちら側が何か特別なジェスチャーや会話方法をしなくてもプロジェクトは順調に進んでいった。

 

言葉を見ていた

その人とは仕事以外にも忘年会なんかの飲み会にも行った。飲みの場でもコミュニケーションはほんとど完璧だったと思う。同じタイミングで笑うし、その場を楽しんでいるように見えた。

 

酔いもあったので思い切って聞いてみた。「耳がほとんど聞こえないのにどうして会話がわかるんですか?」と。その人によると、口の動きとかすかに聞こえる音で会話を見ているのだそうだ。

 

だから会議なんかで複数人が同時に発言したり、マスクをしている人がいたらダメなんですとも言われた。言われなければ全く気づかなかった。だから会議では発言時はマスクをはずすとか、発言を遮らない、同時にしないっていうルールが自然と出来た。

 

教えてもらうこともたくさんあった。大きなものが手話。「鈴」、「武」、「木」、「田」、「村」はすごく覚えやすいし、みんな自分の名前を手話で覚えた。手話だけを使った飲み会を見たことがあるだろうか?会話はゼロで静かだけどメチャクチャ盛り上がっていた。

 

違いは何もない

プロジェクトは順調に進み、完了した。そしてチームは解散になった。僕も別のチームに編入となった。その人は能力を評価され、そのチームに残ることになった。今でもそのチームに居るようだ。

 

耳が聞こえないって大きなディスアドバンテージだけど、仕事をする上で何も違いはなかった。なんなら別チームに飛ばされた僕より優秀だったのかも。

 

その人と一緒に仕事をしていていろんなことを気付かされた。まず耳が聞こえない人と話す時はマスクを外しておくってこと。彼らは文字通り言葉を見ている。花粉症がツラくとも、会話の時はマスクをずらしておくのが親切。次に同時複数で発話しないこと。普通の人が一度に複数のものを見ることが出来ないように、言葉だって同じだ。

 

耳が聞こえなくとも違いは何にもない。そう思った。